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『E-MOTION PICTURE NOW!』映画クロスレビュー
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『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルとライアン・ゴズリングが再タッグ! 人類で初めて月面を歩いたニール・アームストロングの実話を描いた物語。 月面着陸に至るまでの過酷な道のりを通し、より良き未来を形作るために必要な勇気と覚悟を描いた作品です。 2/8(金)公開ですが一足早く見どころをご紹介!
1960年代。空軍のテストパイロットを務めるニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は、最愛の娘を亡くした哀しみから逃れるかのようにNASAの有人宇宙飛行計画「ジェミニ計画」の宇宙飛行士に志願する。妻と息子とNASAのあるヒューストンへ引っ越し、仲間達と共に有人宇宙センターでの講義と過酷な訓練を受けていくニール。ソ連との宇宙開発競争が激化する中、紆余曲折を経ながらも月面着陸を主目的とした「アポロ計画」へと移行しパイロットの一人に選ばれるニールであったが、内部電源テストの際に予期せぬ悲劇が訪れるのであった。
BEVERLY HILLS, CA - NOVEMBER 04: Damien Chazelle, Ryan Gosling poses at the 22nd Annual Hollywood Film Awards on November 4, 2018 in Beverly Hills, California. (Photo by Steve Granitz/WireImage)
『セッション』『ラ・ラ・ランド』と名作続きのデイミアン・チャゼル監督が今回挑むのは、ニール・アームストロングの伝記『ファーストマン: ニール・アームストロングの人生』を原作とした実話。これまでのような音楽要素やミュージカル要素を一切用いることのない伝記映画である。主演を務めるは、『ラ・ラ・ランド』において主人公の一人・セブを演じたライアン・ゴズリング。さらに付け足すとすれば、製作総指揮を務めるのはなんとスティーヴン・スピルバーグ。『ラ・ラ・ランド』とは明らかに性質が異なる作品のため、あの世界観を求め過ぎていると肩透かしを食らうかもしれないが、これまでにない骨太な人間ドラマを目の当たりにすることができるだろう。
語り継がれる歴史上の偉人や大罪人、凡人では成し遂げられない何かを成し遂げた人物、メディアで活躍するタレント・俳優・歌手etc…、皆同じ人間のはずなのに、どこか別次元の存在のように思えてしまうことはないだろうか。あなたやぼくと同じようにモノを考え日々を生きているはずなのに、先行して伝わってくる情報にばかり囚われて、そういった人達の心や葛藤に寄り添うことは難しい。でも、この作品を観ればニール・アームストロングがどういった人物であったのか、どういった想いを抱えながら月面着陸という偉業を成し遂げたのかが見えてくる。ぼく達と何ら変わらない人間であったことを、無数の苦境に立たされ、苦悩し、涙し、憤り、様々な感情を孕みながら目の前の壁に立ち向かっていたのだと理解できるはず。そんな彼が不可能を可能に変えていく姿に、勇気だって貰えてしまうはず。
冒頭、大気圏内で実験飛行をするアームストロングの姿が描かれる。あなたの命があなたのものであるように、ぼくの命がぼくのものであるように、彼の命もまた間違いなく彼のもの。だが、テスト機に搭乗している間の彼は、他の誰かにその権利を掌握されてしまっているかのよう。それが彼の選んだ仕事なのだから仕方ないと言えばそれまでなのだが、そんな状況が彼の日常においても巻き起こり続けていく。たくさんの愛情を注ぎ幸せにしてあげたかったはずなのに、彼の意に反して幼い娘の命は潰えてしまう。過酷な訓練や危険なミッションを共に乗り越え月面着陸を目指してきたはずなのに、仲間達は次々といなくなっていく。願えば願う程に、欲すれば欲する程に、彼の前からは多くのものが消えていく。いつだって見上げればそこに月はあるというのに、自らの掌で掴み取ることだけは絶対に許されない。かと言って、引き下がればこれまでの全てが無に帰してしまう。そんな状況を覆そうと、不可能を可能に変えようと、懸命に足掻き続けていく姿にきっと胸を締め付けられてしまう。まるでそれが彼の宿命であるかのように、引き下がることだけは決して選ばない。
誰もがついつい忘れがちだけど、日頃「当たり前」だと思っていることは、本来であれば「当たり前」ではなかったこと。先陣を切って駆け抜けてきた者達の失敗や犠牲の上に成り立つ「当たり前」であって、その段階に達するまでには膨大な時間と労力が費やされている。ぼく達は成果物を手にしているだけであって、完成に至るまでの過程を知らずにいることの方が多い。どんな些細なことであれ、「不可能」を「可能」に、「可能」を「当たり前」に変換してきた者達の存在が確かにある。今作を通して知ることになるのは、物事の基盤を作り出してきた者達が抱える葛藤であり、前人未踏の地に道を切り拓いてきた『ファースト・マン』の在り方。
劇中、ロケットのコックピット内にハエが紛れ込むのだが、躊躇うことなく叩き潰される。取るに足らない1シーンに思えるかもしれないが、おそらくそうではない。何なら、ぼくら人類が宇宙空間へ進出しようともがいている姿とハエの姿は大差ない。大気圏突入の際に燃え尽きようが、機体トラブルによって宇宙空間を放浪することになろうが、宇宙規模で考えてみればどうでも良いこと。宇宙に意志があるかどうかは置いといて、ハエが部屋に入ってくれば排除しようとするのと同じく、本来適応できない空間に人が足を踏み入れようものなら排除されてしまうのが自然の理。ハエと人間の関係性は、そのまま宇宙と人間の関係性に通じていたように思う。ただ、ハエが人に一矢報いることだってないとは言い切れない。それと同じく、人間が宇宙に一矢報いることだってないとは言い切れない。周囲から反対されたり必要とされていない中で前を向き続けることは非常に孤独でツラくもあるが、その上で何かを成し遂げられたのだとしたら、怖いものはもう何もない。
やがていつかは地球の資源も枯渇する。このまま温暖化が続いていけば、人が住めない土地にだってなってしまう。地球に代わる新たな惑星を見つけ、移住する必要だって出てくるかもしれない。が、少なくとも、それらの状況に今この時代を生きるぼくらが直面することはまずない。終焉を迎えるとしたら、何世代か先の話。知らぬ存ぜぬを決め込むことも可能だが、後世のことを考えないのはやはり違う。ぼくらだって過去から受け継いだ負の遺産を背負っている。しかし、同等かそれ以上の素晴らしいモノだって託されている。その上で何を成すべきなのか、これから先の時代を生きる者達に何を遺していけるのか。まだ見ぬ世界や価値観を、より良き未来を築いていくための『ファースト・マン』になれるのか。冒頭からエンドロールに至るまで、心臓を鷲掴みにされているかのような感覚が拭えなかった。その状態こそが、『ファースト・マン』足り得る者のニュートラルな感覚に違いない。同時に、それに耐えられるだけの勇気を持ち合わせていることが必要なのだ。『セッション』とは異なる何か一つのことへ特化した向き合い方。『ラ・ラ・ランド』とは異なる胸に抱えた夢との向き合い方。どちらの作品ともテイストは大きく異なるが、根底に宿りし想いはデイミアン・チャゼルを感じさせてくれる鋭く儚く力強いモノであったと思います。ぜひ劇場でご覧ください。青春★★★恋 ★エロ★サスペンス★★★★ファンタジー★★★総合評価:A『ファースト・マン』2019年2月8日(金)全国ロードショー東宝東和©Universal Pictures©2018 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
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ミヤザキタケル
映画アドバイザー・元俳優、ラジオ・映像・イベント出演。 映画に不慣れな人と良き映...
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やまだ
2019/01/09 17:05
映画を見てからハマってしまい、アマゾンミュージックでQUEENずっと聴いてます!
ジャスミン
2019/01/05 00:54
こっちでも投稿できんかったけど、それはサイト名ではなかった感じやなぁ
2019/01/05 00:47
サイト名がNGワードか
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2019/2/18 更新
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