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1987年の大統領選挙において最有力候補であった政治家ゲイリー・ハートを描いた実話ベースの物語。 一つのスキャンダルによって窮地に追い込まれていくハートの姿を通し、時代毎に揺れ動く正しさの定義を問われることになる作品です。 2/1(金)公開ですが一足早く見どころをご紹介!
アメリカ・コロラド州。「ケネディの再来」と呼ばれ史上最年少の46歳で民主党の大統領候補になった若き政治家ゲイリー・ハート(ヒュー・ジャックマン)は、1987年の大統領選予備選において他の候補者を圧倒的なまでに引き離し、最有力候補(フロントランナー)へと躍り出る。持ち前のハンサムさ・カリスマ性・志の高さで周囲の心を惹き付け、長年の友人であり参謀を務めるビル・ディクストン(J・K・シモンズ)や、別居中の妻・リー(ヴェラ・ファミーガ)の協力もあり全てが順調に進んでいく。しかし、3週間後に報じられた不倫疑惑がキッカケとなり、瞬く間にハートを取り巻く状況は激変していくのだが...。
人は聞いていて心地の良い美談も好きだが、下世話な醜聞にも目と耳と心を傾けてしまう。何かしらの偉業を成し遂げた者達のサクセスストーリーに心動かされることもあれば、自身より格上だと思っていた者の失墜・転落模様に心奪われ嬉々してしまうことだってあると思う。もちろんそれだけが全てではないが、他人の成功を妬んだり、他人の失敗を望んでしまう面が人には確実に備わっている。だからこそ、お昼のワイドショーや低俗なゴシップ誌は存在し続けるし、ぼくもあなたも見たり読んだりしてしまう。綺麗なモノだけでは世の中回っていかない。汚くて悍ましいモノもあるからバランスが取れている。何かしらの吐け口が、溜め込んだ鬱憤を晴らす術がなければ、人は生きてはいけない。
だからといって、何でもアリかと言えばそうじゃない。人としてのモラルや品性は尊重されるべき。清く正しくあるべき場面においては、徹底的にそうあるべき。決して犯してはならない罪が、失ってはならない理性が、果たすべき正義が、譲ってはならない尊厳が絶対に存在する。だが、その尺度は一体誰が決めるのだろう。劇中でも言っていたように、時代によって物事を図る物差しは変わっていく。そんな簡単に変化してしまうモノに、そもそも価値など宿っているのだろうか。実在した政治家のスキャンダルを通して問われていたのは、常に変容していく正しさの定義。何を以って“正しい”と判断するのかを、今この時代を生きるぼく達は問われることになるだろう。
観ていて思った。大統領選挙真っ最中の男の女性問題が浮き彫りになったのなら、その時点で終わりだろうと。それが有権者の耳に届いてしまったのなら、信用はガタ落ちで総叩きだろうと。現代風に言えば、「大炎上」を迎えてフィニッシュだろうと。だが、それは今の時代を生きるぼく達の価値観だから出てくるものであったのかもしれない。誰もが匿名で自分の意見や悪意すら発信できてしまう世の中を生きているからこそ生じる思考であったのかもしれない。驚くことに、劇中においてハートが一方的に非難される展開は訪れない。実話を描いているため、1987年のアメリカにおいてはそれが事実であったということ。そこに違和感や物足りなさを感じてしまうかもしれないが、その違和感こそが今作と向き合うための鍵になっていく。
たとえ何かしらの欠陥を抱えていたとしても、別の何かを完璧にこなすことで帳尻が取れている人が世の中にはたくさんいる。というか、あなたやぼくを含め、全ての人間がそうだと思う。他者と手を取り合うことで、互いの弱さをカバーし合うことで、この社会は成り立っている。完全無欠の人間なんて存在しない。クリーンであることに越したことはないが、たとえ女性問題を抱えた政治家であったとしても、全身全霊で世の中や国の未来を想っている人は絶対にいる。理屈で考えることさえできたのなら、誰もがその道理に異を唱えることはないだろう。しかし、明かされるタイミングや伝え方次第で、受け取り方は如何様にも変化する。それぞれがそれぞれの事情や感情で、“正しさ”の定義を捻じ曲げ変容させてしまう。そうして、人と人は分かり合えなくなっていく。
劇中、ワシントン・ポスト紙のパーカー(ママドゥ・アティエ)という男がいた。彼だけは周囲に囚われることなく、本来在るべき“正しさ”を見据えていたように思う。目の前で繰り広げられる数多の駆け引きや圧し掛かる重圧を前にしても忖度することなく、常に事実だけを見極めようとしていた。私利私欲に囚われることなく、真実を追求することだけに身を投じていた。綺麗事だけではやっていけないのが世の中。当然彼も思い通りにはいかない。けれど、終始ブレることなく自身の使命に従順であった。それができるのは、本当の“正しさ”を知っていたからに他ならない。
物語が大きく動き出す時には、パーカーの行動がトリガーとなっていた。常に気持ちが揺れ動いてばかりいる周囲の者達。強気でいられる状態の時にパーカーと対峙したところでビクともしないが、弱気になってしまっている時にパーカーの揺らがぬ姿勢と対峙したのなら押し負ける。反論する余地のない正しさを見せつけられてしまったのなら、抗いようもない。虚勢や意地を張り続けることだってできるかもしれないが、自身の心に負い目を感じてしまったが最後、最早逃げ切ることは許されない。
TOKYO, JAPAN - JANUARY 21: Actor Hugh Jackman attends the press conference for the Japanese premiere of 'The Front Runner' on January 22, 2019 in Tokyo, Japan. (Photo by Keith Tsuji/Getty Images)
劇中の時代とぼくらが生きる今この時代、悲惨なのは、混沌と化しているのは一体どちらだろう。数多の不要な情報が氾濫気味に溢れ出て、無責任で卑劣で無自覚な自己主張が日常的に飛び交い、そんな中で本当に大切なモノだけを見極めなければならないのが今の世の中。「人の噂も七十五日」ということわざがあるが、ネット主流の現代においては適応されない場合が殆ど。ネット上に何かしらの形跡が残ってしまったのなら、たった一度の間違いや過ちであっても命取り。劇中の出来事が今この時代で起きていたのなら、もっとエゲツないモノを見せつけられていたような気がしてならない。ぼく達はどう生きていくべきなのだろう。どうしたら揺れ動くことのない“正しさ”を維持していくことができるのだろう。1987年に起きた出来事を通して、今この時代の在り方を見つめ直す時間になると思います。ぜひ劇場でご覧ください青春★★恋 ★エロ★サスペンス★★★ファンタジー★総合評価:B『フロントランナー』2 月 1 日(金)TOHO シネマズ 日比谷他全国公開配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント原題:The Front Runner監督: ジェイソン・ライトマン(『マイレージ、マイライフ』『ジュノ』)脚本:マット・バイ&ジェイ・カーソン&ジェイソン・ライトマン原作:マット・バイ著「All the Truth is Out」キャスト:ヒュー・ジャックマン(『グレイテスト・ショーマン』『LOGAN/ローガン』)、ヴェラ・ファーミガ(『マイレージ、マイライフ』『トレイン・ミッション』)、J.K.シモンズ(『ラ・ラ・ランド』『セッション』)、アルフレッド・モリーナ(『スパイダーマン2』)公式サイト:http://www.frontrunner-movie.jp
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ミヤザキタケル
映画アドバイザー・元俳優、ラジオ・映像・イベント出演。 映画に不慣れな人と良き映...
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やまだ
2019/01/09 17:05
映画を見てからハマってしまい、アマゾンミュージックでQUEENずっと聴いてます!
ジャスミン
2019/01/05 00:54
こっちでも投稿できんかったけど、それはサイト名ではなかった感じやなぁ
2019/01/05 00:47
サイト名がNGワードか
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2019/2/18 更新
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