あらすじ
限られたごく一部の者しか存在を認識していないCIAの機密特殊部隊に所属するジェームズ・シルバ(マーク・ウォールバーグ)は、司令官・ビッショップ(ジョン・マルコヴィッチ)の指令でアメリカに潜伏するロシアの諜報員を確保する「オーバーウォッチ」作戦に参加し、想定外の反撃を食らい敵味方共に死傷者を出しながらも痕跡を残すことなく任務を完遂する。
16ヵ月後、東南アジアの国家・インドカーで盗み出された危険な放射性物質“セシウム”を回収する任務にあたっていた一行は、その所在を明かす代わりに亡命を迫る元警官のリー・ノア(イコ・ウワイス)と取引をすることに。
米国大使館から22マイル(35.4㎞)離れたアメリカへ向かうべく移送機の待機場所までノアを護送するシルバ達であったが、ノアが握る情報を国外へ出すまいと執拗な妨害を繰り返す追手達に行く手を阻まれるのだが...。
4度目のタッグ!マーク・ウォールバーグ×ピーター・バーグ
マーク・ウォールバーグ&ピーター・バーグ
LOS ANGELES, CA - JULY 28: Mark Wahlberg and Peter Berg attend the Los Angeles Photo Call for STXfilms' 'Mile 22' at Four Seasons Hotel Los Angeles at Beverly Hills on July 28, 2018 in Los Angeles, California. (Photo by Jon Kopaloff/FilmMagic)
『ローン・サバイバー』、『バーニング・オーシャン』、『パトリオット・デイ』と実話ベースの作品が続いていたマーク・ウォールバーグ×ピーター・バーグのタッグが今回描くのは、その存在が世間に知られていない機密特殊部隊。
そう、実話でも何でもなく完全なフィクションである。
『ローン・サバイバー』
『バーニング・オーシャン』
『パトリオット・デイ』
実話ベースという絶対的な説得力が欠けているのを補うためか、とてもド派手な銃撃戦が絶えず描かれていく今作。
ドローンを用いた近代的な任務描写やSNSなどを通じた個人情報の監視など、今この時代だからこそあり得るかもしれない情報戦やサイバー攻撃などのリアルが垣間見えてくる。
日頃考えもしないが、考える必要もない位に平和だからなのかもしれないが、考えなくても済むよう操作され仕向けられているのかもしれないが、こういったことがきっと世界では起きているのだと、知らずにいるだけでぼくらの身近でも似たようなことが起きているのかもしれないと感じられグイッと引き込まれていってしまう。
フィクションではあるけれど、フィクションだからこそ描けるリアルが詰まっていた。
何を言いたいかって、実話ベースの作品でなくともマーク・ウォールバーグ×ピーター・バーグのタッグは最強だということだ。
© MMXVIII STX Productions, LLC. All Rights Reserved.
戦う理由
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序盤、観ながらずっと考えていた。
シルバ達はどうしてこんなにも危険な仕事に就いているのだろうかと。
生まれ持った性質故に苦しんでいる者もいれば、家庭との両立ができず諸々破綻しかけている者もいる。
にも関わらず、平和維持のために命を懸けて働いている。
何故そんなことができるのだろう。
リスクばかりで、ほんの僅かな気の緩みが死へ直結する世界。
自分だったらできないなと、家族や自分のことをもっと優先できる環境や仕事を選んでしまうなと、彼らの心理を理解できなかった。
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だが、途中で気が付いた。
日夜テロの脅威に晒されるリスクが付き纏うアメリカと、テロの脅威に晒されるリスクが極めて低い日本との差なのだと。
日本人であるぼくらでは、前提条件があまりにも違うのだと。
彼らには強い愛国心がある。
日本人にだってもちろんそういった心持ちの人もいるはずだけど、そう多くはないと思う。
あなたの心に「愛国心」はあるだろうか。
恥ずかしながらぼくにはない。
「愛国心」とう言葉自体、自分とは無縁のとても他人事のような響きに感じられてならない。
各々キッカケはあるだろうが、彼らはテロの脅威を前にして立ち上がったのだと、誰かがやらなけらばならないことを自分がやらねばならないと感じたのだと、その胸に強い責任感を持ってやっているのだと納得できた。
それを理解してからは、全てが変わって見えた。
劇中、シルバが広島と長崎に落とされた原爆のことを言及するシーンがあった。
描かれていたのは現代の出来事であるが、描かれていた本質は第二次世界大戦やそれ以前から変わらず争い事から抜け出すことのできない人間の在り方であったのだと思う。
真の平和を追い求め、模索する
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銃撃戦ばかりでドラマ部分が希薄に感じられる人が中にはいるかもしれない。
でも、そんなことはないと思う。
この作品は実話とかではないけれど、物語の根底に宿っているモノは現実そのもの。
争い事をやめられないぼく達人間の在り方を、やったやられたの呪縛から抜け出すことのできないどうしようもない姿を、真に平和を築くために必要な何かを確立させなければこの先も変わっていかない現実を真摯に描いていたとぼくは思う。
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平和を守るのではなく、脅威になり得るものを取り除くのが仕事だとシルバが言っていた。
今ある平和を守るのではなく、これから先の平和を掴み取るための戦いを彼らはしていたのだと思う。
しかし、相手の一歩先を行く情報や兵器や戦闘スキルだけを磨いていてもどうにもならない。
そのやり方だけでは、相手側の全てを討ち亡ぼすことでしか終わりは来ない。
それでは真の平和など勝ち取れない。
原爆を例に出していたのもそう。
反撃や反抗の芽を根っこから摘み取ってしまうその圧倒的な力を行使したところで、争いに終止符は打たれなかった。
第二次世界大戦は終わったかもしれないが、今この世界から争い事が消え去ったわけではない。
むしろ、悲しみや憎しみや怒りが増しただけ。
相手の全てを討ち亡ぼすのであれば、反抗の兆しを僅かでも孕む者を徹底的に駆逐し、残数が0になるまで潰さないと成立しない。
たった一人でも生き残り、その悲しみや憎しみや怒りが芽を出したのなら、それはまた争いの火種となり次の悲しみ・憎しみ・怒りを生み出していくだけ。
その連鎖が断ち切られることはなく、永遠に終わりが来ない。
もっと別の何かがないと、打ち滅ぼすのではなく理解し合うための新たな術を確立しないと終わらない。
当然その答えを描けているはずもないのだが、そういったことに向き合っている作品であった。
総合評価
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国によって程度の差はあるけれど、ぼく達人間は未だ平和を掴み取れていない。
過ちを犯すのが人間だから、完全平和の実現は難しいことなのかもしれない。
過去の悲惨な歴史を戒めにすることでしか踏み止まれず、場合によっては繰り返す。
DNAレベルで人間の在り方をいじらない限り、他者と誤解なく分かり合うことなど不可能。
だからと言って、諦めて良い理由にはならない。
次の世代や何百年も先になるかもしれないが、新機軸の今までとは全く異なる手段で平和を掴み取ることのできる未来が訪れるかもしれない。
その日のためにも、先人達が今までそうしてきたように、過去の悲惨な歴史を、悪しき想いに蝕まれてしまう人間の心の在り方を、後世に正しく語り継いでいくことが今を生きるぼく達の使命なのだと思う。
描いていたのはぼく達の現状であり、抱え続けている数多の課題。
忘れてはならない歴史の数々。
フィクションではありつつも、大いなるフィクションでした。
ぜひ劇場でご覧ください。
青春★★
恋 ★
エロ★
サスペンス★★★
ファンタジー★★
総合評価:B
『マイル22』
2019年1月18日(金)新宿バルト9ほか全国公開
配給:クロックワークス
監督:ピーター・バーグ『バトルシップ』、『ローン・サバイバー』 脚本:リー・カーペンター 撮影:ジャック・ジューフレ
出演:マーク・ウォールバーグ、ローレン・コーハン、イコ・ウワイス、ロンダ・ラウジー、ジョン・マルコヴィッチ ほか
コピーライト:© MMXVIII STX Productions, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:mile22.jp Facebook & twitter @mile22moviejp
2018年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/95分/原題:Mile 22