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【ヴェネチアで銀獅子賞受賞の快挙】揺れ動く正義の在り処と夫婦の愛『スパイの妻』

相容れない正義のあり方

 数多の戦争行為と数多の過ちを繰り返し、数え切れない程の犠牲を払った上に成り立つ“今”を生きる僕たちにとって、「戦争反対」は周知の事実であり、どんな事情であれ非人道的行為は悪と見做される。それらは国を問わず、多くの人にとって共通認識であると思う。しかし、1940年の日本を描く本作においては、そういった当たり前がまかり通っておらず、敵国が存在するあの時代ならではの空気感を、戦争というものの恐ろしさを、人間の歪さというものを、あなたは目の当たりにすることになるだろう。

©2020 NHK, NEP, Incline, C&I

 時代が違えば、国が違えば、思想が違えば、教育が違えば、育ってきた環境が違えば、考え方も大いに異なる。同じ人間とて、時には家族や友人でさえ、相入れることのできない存在へと成り果てる。言わずもがな、戦争において悪は存在しない。皆が己が正義を掲げて戦い、敵対する相手を悪と見做しているだけに過ぎない。そこにあるのは掛け値なしの正義vs正義。勝利した方が正義となり、敗北した方が悪となるだけのこと。つまりは、どんなに卑劣な手段を用いようと、勝利を掴むことさえできれば帳消しにできてしまう。現代ともなれば話は別だが、ネットもSNSも存在しないかつての時代においては、勝利者たちにとって都合の良い美談のみが歴史に刻まれ、敗北者たちにとって都合の悪い悪行が歴史に刻まれる。それらが後の世代へと語り継がれていくことになる。

©2020 NHK, NEP, Incline, C&I

 不意に恐ろしい国家機密を知り、己が信ずる正義のために行動を起こしていく夫婦であるが、その正義に観客である我々は大いに賛同できるはず。だが、太平洋戦争間近の日本において、「一致団結」や「お国のために」が主流の時代において、彼らの行動は災いを招き入れる反逆行為と見做される。本作の見所となってくるのは、時代によって物事の捉え方が大いに変わってしまう人間の不完全性であったり、立場や状況次第で如何様にも変わっていく正義のあり方など、目に見えない部分に数多く宿っている。

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ミヤザキタケル

1986年、長野県生まれ。 2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW...

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