Netflixドキュメンタリー『父、兵士、その息子』レビュー。戦争で変わった父親と息子の関係とは

戦争による負の連鎖は、戦場だけに限らない

Netflix映画『父、兵士、その息子』独占配信中

『父、兵士、その息子』は、兵士のアイデンティティと家族に与える影響を赤裸々に描いている。
片足を失ったアイシュは、自身の存在意義である兵士としての務めができないことで、大きな葛藤を抱えるようになった。

本作の前半で、アイシュは同じ軍人がPTSDに苦しむ姿を見て、自分はあのように苦しみたくないと話していた。
しかし結果はアイシュの思いに反して、目に見えて性格を変えてしまった。

10年にも及ぶ長い撮影期間から見えたことは、戦争による影響は兵士だけでなく、その家族にも大きな影を落とすということだろう。

この事実を踏まえ、本作のラストは賛否が分かれると思われる。
アイザックは大学に進学して警官になることをやめ、父と同じ軍人になることを決意する。

アイシュとしては、自分の息子が同じ兵士になることは、この上ない誇りだろう。
だが一方で、アイザックが軍人になることで、また同じ悲劇が繰り返される可能性も無視できない。少なくとも戦争や紛争が続く限り、この負の連鎖は続くかもしれない。

かといって、息子が軍人になることを喜ぶアイシュを、誰も責めることはできない。
アイシュは軍人であったことを誇りに思っているし、帰還した彼を称賛する国民も大勢いた。

兵士の尊厳と家族の絆を保つ、最も望ましいこと。それはアイシュをはじめとする兵士の愛国心を、戦場以外の場所で活かす世の中にすることだろう。この映画のラストはそんなメッセージも孕んでいるように感じた。

この家族が救われる確実な方法は、戦争をなくすこと以外ほかならない。

『父、兵士、その息子』作品情報

タイトル：『父、兵士、その息子』（原題：Father Soldier Son）
監督：レスリー・デイヴィス、カトリン・アインホーン
配信ページ：https://www.netflix.com/title/81002464

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