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【映画の波打ち際17】ルキノ・ヴィスコンティ監督作『ベニスに死す』から考える「LGBTQ」の争点とは

■「LGBTQ」を巡る争点と現代性

(C) 1971 Alfa Cinematografica S.r.l. Renewed 1999 Warner Bros.

いつの頃からか、「LGBT」という言葉が注目され、急速に認知されるようになった。最近では、自分の性の相を明確に出来ない「クエスチョニング」の人も含めて、「LGBTQ」と改められている。こういう括り方をすること自体に筆者は違和感を覚える。それはそうした人々が普通とはすこしちがうひとたちであるとして線引きを行なう行為である。人間はどうもこうした線引きやカテゴライズが好きなものだから仕方がないのかもしれない。確かに「LGBTQ」をテーマとして真摯に製作に取り組むことはアクチュアルな要請ではあるだろう。しかし玉石混淆の作品群をみると、鋭い視点をもった力作も少なからずあるとは言え、これがほんとうに小説やその他の芸術メディアではなくて、映画である必要があるのかという純粋な疑問を持たざるを得ない作品が多いように思う。現代的テーマに取り組む以前に、映画という表現手段を選んだ必然性が全く見当たらないのだ。それでもそれらの作品は必死で何かを説明しようとしている。映像は現代人にとって最も身近なメディアであるから、必然と言えばそうなのだが、当の監督の演出力が肝心の映像世界をコントロール出来ていない例が多く見受けられ、問題意識だけでは当然「映画」は作れない。

そもそも、その問題意識が希求するものとは何か。普通とはすこし違う、あるいはそのことによって普通とされる他者から虐げられてきた人たちの存在を認識させ、権利を主張することなのか。しかしすでにその存在についてはひろく認識は及んできているし、公民権運動によって権利を獲得するまでの物語はアメリカ映画が散々描いてきたテーマ性だ。それでも尚、声高に主張し、認識を促そうとするからには、“その先の物語”が思想的に臨まれていなければならないだろう。それであって初めてアクチュアルな取り組みとなるはずである。

いつかの議員の「生産性がない」云々の発言などあれば、プロテクトしたい主張の動きは再燃するのは当然である。しかし今度は以前と同じではいけず、違う戦い方をしていかなければならない。「LGBTQ」問題に真摯に取り組もうとするあまり、現代病とも言える魂の疲弊が生じているのではないかと思われる。だから時に主張は暴力的になる。それにこのジャンルは繰り返すように供給過剰である。一度精神の稼働を停止して、一休みしてみる。簡単なことである。そこで筆者が薦めたいのが、世界で最も有名な「ホモセクシュアル映画」である『ベニスに死す』(1971)を観ることだ。

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