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いかにして若いスタッフを育成していくか『癒しのこころみ〜自分を好きになる方法〜』篠原哲雄監督が語る

これからの人材を起用して若い人を育てていく

―これまでは撮影を上野彰吾さんにお願いすることが多かったようですが、今回、長田勇市さんですね。

監督を打診されたときには、すでにカメラマンは長田さんと決まっていました。今回のチームはプロデューサーの大和田さんを始め、僕にとって初めての方ばかりでしたが、大和田さんと長田さんは長く組んでいらしたようです。

僕にとって長田さんは自分より一回り上のベテランのカメラマン。『TATTOO<刺青>あり』(1982年)の印象が強く残っています。低予算の作品でも臨機応変に動いてくださる方と聞いていました。1人のカメラマンとずっとやり続けるのもいいのですが、いろいろなカメラマンのやり方を見ていくのもいいのではないかと思いました。

―本作の撮影コンセプトについて、長田さんにはどのように伝えましたか。

僕は最初からコンセプトが決まっているということはあまりないのです。その作品に合ったテイストは徐々に生まれてくると思っています。例えば、この作品の場合、施術する場面はすごく狭いところで撮影しなくてはいけません。自然とコンパクトな体制でやっていました。一方で、野球場や富士山の麓での森林浴のシーンではダイナミックな画がほしい。出来るだけ自然に見えるということは望んでいましたが、コンセプトを決めることはせずに、かといって成り行きに任せると言うことでなく「臨機応変に、スピーディーに行きましょう」という風にその場の空気感を大事にやっていたつもりです。

©ドリームパートナーズ

―現場の雰囲気はいかがでしたか。

長田さんには若い人を育てようとする姿勢が伝わってきました。それは映画界にとっても重要な問題でもあります。撮影部、照明部にそれぞれこれからの人材を起用して時には叱咤しながら進んで行きました。

人を育てるということはダメなことはダメと、ちゃんと教えながらやっていくと言うことを改めて実感しました。演出部の見習いくんにもカチンコの入れ方など指導してくれていました。

―長田さんご自身はどんなカメラマンでしょうか。

長田さんは時に芝居を見ないようにしています。もちろん間近で見てくれる時もありましたが、比較的遠くから見て臨場感をつかんでくれていたように思います。コンテを全部決めきらずにその場で生まれたことも取り入れながら撮ってくれました。「見ちゃうとこう撮らなくてはいけないということになるだろ」という風な言い方をしてくれていたのが印象的でした。

一方で、野球場のシーンなどコンテが決まっている場面はそれに沿ってガンガン撮っていく。それも長田流。絶対にこうでなくてはならないという発想ではなく、いつでも変更可能な姿勢で。

©ドリームパートナーズ

―カット割りなどは決めずに撮られたのでしょうか。

野球場以外、コンテはありません。どこに構えたらいちばんよく撮れるのか、長田さんは直感で分かっています。場合によっては僕が「カット1、ここまでです」、「カット2、こう入ります」、「カット3、これです」と細かく説明します。すると長田さんは「はい、はい」と聞いているものの、それに則って撮るのではなく、「撮りながら変わっていってもいいんじゃない?」という人。これは非常にやりやすかったですね。

コンテをはっきり決めてしまうと、その通りに撮らなきゃいけないと思ってしまいがちです。しかし、最初のポジションを撮っていたら「それで成立するじゃないか」となって、別のポジションのカットはなくてもいいということがあるわけです。まさに臨機応変に撮っていました。

―長田さんから何か提案はありましたか。

例えば太陽や緑とか、事前に必要な実景を長田さんなりに撮っておいてくれたことは何度かありました。また芝居の部分でも、僕の演出に対して、長田さんから「こうでしょ」といわれたことも。ご自分の貫くべき姿勢は曲げない部分がありました。

―具体的にはどのシーンでしょうか。

お店のシーンでいうと、中島さんが松井さんにお客さんを取られたと文句を言ってくる場面です。松井さんが自分の手元の体重計を押しながら力加減の練習をしています。ここは手元が入るくらいのサイズがいいと思っていたのですが、長田さんはそこを切る。人物がちょうどいいフレーミングで入り、松井さんの行為の全体は見せないけれど、芝居中心なサイズ感。そのカットの前後に一瞬だけ体重計の寄りが編集的にも挿入されることを想定したサイズです。引きのカットが続くと凡庸な画になってしまうと、ちょっと締めたのだと思います。そういうことをカメラマンの直感で選んでくれました。

©ドリームパートナーズ

©ドリームパートナーズ

―特機などはお使いになりましたか。

今回は移動車やイントレを使わない。誰が決めたわけでもないのに、自然にそうなっていました。撮影日数が11日とあまり余裕がなく、普通のレールを引くには人員的にも場所的にも大変なので、そういうことはなるべく排除しようとしてくださったのだと思います。でもご自分で用意されたミニレールを秘密兵器のように使っていました。

長田さんは機材をほとんど自分の車に積んで、自分で運転して来るスタイル。まさにインディペンデンス的な体制で、独立独歩なところがあります。見習いで来た新人を隣に乗っけて、道中、いろいろ話をして伝授していたようです。

子どもと観たい、おすすめの80〜90年代映画 8選|あのドキドキを親子で共感!
次のページ : 長田さんのこだわりは。。。

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杉山すぴ豊

2020/06/30 10:15

すぴ豊です。
篠原哲雄監督!
前にお会いしたことあるんですが
すごくいい方ですよね!
あと映画を目指す若手たちに温かい方だったなあ。

とてもいい記事ですね。
また機会があれば篠原哲雄さんに会いたくなりました。

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ほりきみき

映画の楽しみ方はひとそれぞれ。ハートフルな作品で疲れた心を癒したい人がいれば、勧...

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