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改めてのヴィスコンティ論

■巨匠ヴィスコンティへのイメージ

「リアリズムを超え、情熱を失った人間を描くのはヴィスコンティの仕事ではなくて、 パゾリーニ以後の作家たちの課題である。その意味で、ヴィスコンティは、もはや過去の 巨匠と言えるかも知れない。」(「映画監督 増村保造の世界 下」)

これは、イタリアに留学し、ルキノ・ヴィスコンティやフェデリコ・フェリーニのもとで実際に映画を学んだという増村保造が、その鋭い批評意識によって書き上げた「ヴィス コンティ論」の結びの部分である。この論考が書かれた翌年の一九七一年に、ヴィスコン ティは『ベニスに死す』を製作している。『ベニスに死す』に続く晩年の三作、『ルートヴ ィヒ』(一九七二)、『家族の肖像』(一九七四)、『イノセント』(一九七六)は、確かに爛 熟したヴィスコンティの貴族趣味が遺憾なく発揮されてはいるが、その芝居がかった「大 時代的」な作風は、増村が指摘する通り、「過去の巨匠」にこそ相応しいものなのかもしれない。

とはいうものの、「二十世紀」の人である増村保造がすでにこの様な指摘をしている時 点で、「二十一世紀」に生きる私たちにとってヴィスコンティは過去のさらに過去の存在 になってしまっているわけで、その作品世界に対して一体どのような感想を抱けばよいの だろうか。ヴィスコンティの作品が、ここ最近では下火となっているどころか、あまり見向きすらされなくなっているのは明らかである。彼の映画の主人公たちは、みな情動を大 きく変化させながら、情熱が尽きる事なく、感情という感情をとことんまでぶつけ合い、 激情という激情を叩き付け合う。現代の若い世代の人たちが、ヴィスコンティに時代錯誤 の古くささを感じるのは至極当然の事であるし、何よりその仰々しい貴族趣味の「大時代 性」を現実として「リアル」には受け付けられないのだろう。

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