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【映画の波打ち際15】少女の過酷な運命を描いた映画『歯まん』の衝撃

■映画『歯まん』作品情報

【公開】
2019年3月2日(日本)

【原作】
岡部哲也監督によるオリジナル脚本

【監督】
岡部哲也

【キャスト】
馬場野々香、中村無何有、小島祐輔、水井真希、宇野祥平

映画『歯まん』のあらすじ 

ホテルの一室。高校生のカップルが初めてのセックスに臨んでいます。遥香(馬場野々香)と洋一(中村無何有)は互いに身体を求め合い、体位を変えながら、息を荒げていきます。そのまま絶頂に達すると思った瞬間でした。妙に鈍い音が響き、あたりはたちまち鮮血で染め上げられるのです。洋一は激痛に悶えますが、茫然自失の遥香は血しぶきを顔に浴び続けます。鮮血は二人の交接部分からなおも噴き上げています。我に返った遥香の呼びかけに洋一は応えません。すでに息はありませんでした。遥香は、鏡に映る自分の姿に思わず恐怖します。「私は初めてのセックスで人を殺した。愛する人を」遥香はやっと状況を把握するのでした。
 翌朝、ホテルでの出来事がすぐにニュースになっていました。病院に搬送された洋一はそのまま息を引き取ったのです。遥香は生きた心地がしません。「人殺し」という言葉が頭をよぎり、幻聴や幻覚に悩まされ、悪夢をみるようになります。その日から彼女は学校へも通わなくなりました。遥香はあまりの不安と苦しみからカフェで突然泣き出してしまいます。すると近くの席にいた男性がそっと駆け寄ってきてハンカチを渡してくれるのです。男性はすぐに店を出ていき、遥香はハンカチで涙を拭います。
 学校へは行かずに道草をしてやり過ごすを日々を続けて、何日かが過ぎたある日、橋の上で悲しみに暮れていると、トラックで通りかかった八百屋の男(宇野祥平)が話しかけてきます。初めは心配する様子の男でしたが、遥香を無理矢理車に乗せ、連れ去ります。豹変した男は山奥で遥香を犯すのです。遥香は泣き叫びます。しかしその抵抗むなしく、女性器が再び男性器を食いちぎるのでした……。

■映画『歯まん』で描かれる深遠なテーマ 

人を殺したいほど愛する。殺されてもいいほど誰かを愛する。そういった究極的な愛に憧れていたんです。
            (岡部哲也監督 UPLINK渋谷先行上映後舞台挨拶より引用)

 とにかく性描写に拘ったという岡部監督のこのコメントからすぐに思い至るのは、フランスの哲学者ジョルジュ・バタイユによる“エロス”の発想です。
 バタイユは「エロティシズム」を「死におけるまで生を称えること」(ジョルジュ・バタイユ『エロティシズム』)と定義しています。それは、わたしたちの生がもともと死によって貫かれているということを意味します。相手を殺したいほど愛しているというような表現があるように、人間の生の最たる形である愛は、その対極にある死と表裏一体なのです。
 性行為の時、わたしたちは日常では得られない快楽を感じ、今まさに生きていると実感するわけですが、快楽が絶頂を迎えるとエネルギーが放出され、今度は極度の疲労感を覚えます。それはまさしく死に近い感覚と言え、生の充溢は死への強い欲求(タナトス)を導くのです。
 絶頂を迎えると女性器で男性器を食いちぎってしまう遥香は相手に文字通りの死を与えることになります。しかしそれこそが監督が思い描いた「究極の愛」(エロスとタナトス)なのです。本作では人間という存在の“生と死”のあり方そのものを問い続けていきます。

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