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佐藤ありさ

【海辺の映画館―キネマの玉手箱】「映像の魔術師」大林宣彦が最後に自分のすべてを込めて作った“遺言”

「異業種監督」の先駆けから、日本を代表する名監督へ

©2020「海辺の映画館-キネマの玉手箱」製作委員会/PSC

大林は1938年に広島県尾道市で、両親ともに代々医者の家系という家の長男として生まれた。6歳の時から35ミリフィルムに手描きしたアニメーションを製作するなど、観る前に「自分で作る」ことから映画の世界に入り込んだ。少年時代には、実家の持ち家の一つに住んでいた新藤兼人と一緒に映画を観に行ったり、小津安二郎の代表作『東京物語』の撮影を見学したりと、日本映画を代表する巨匠たちとの接点があった。
1955年に大学進学のため上京すると、当時はまだ珍しかった「8ミリカメラによる自主映画」をどんどん製作するようになる。高林陽一ら他県の同志とも連携し、自主映画を着実に普及させていった。大林は、日本の自主映画の先駆者だったのだ。
60年代中頃、まだ発展途上だったCM業界からの誘いを受け、CMディレクターとして活躍するようになる。当時は「金は出すけど口は出さない」というスタンスだったので大林はスポンサー付きで映像の“実験”を行なうことができたわけだ。アラフィフ以上の世代にはお馴染みのマンダムのCMでのチャールズ・ブロンソンをはじめ、海外の有名スターを次々に起用、CM業界の地位向上にも貢献した。
1977年、『HOUSE』で商業映画監督デビューを果たす。当時は、撮影所での助監督の経験もない、自主映画やCMディレクター出身の外部の人間が、大手の映画会社で監督を務めるということは前例がなかったが、大林が各方面を巻き込んだプロモーションを展開したことと、東宝内部でも営業部長だった松岡功(修造の父)や重鎮監督だった岡本喜八らの尽力で奇跡的に実現した。これ以降、自主映画出身の監督が大手の映画会社の作品を手がけることが一気に増えていく。ここでも大林は“先駆者”だったのだ(ただし、大林自身は「撮影所育ち」でないことから、自分のことを「映画監督」ではなく「映画作家」と呼んでいた)。
その後も各社の映画からテレビの2時間サスペンスまでさまざまなフィールドで作品を発表し続けて、一躍トップ監督としての地位を築き上げた。特に、1980年代前半から中盤にかけて発表した、故郷・尾道を舞台にした『転校生』、『時をかける少女』、『さびしんぼう』はいずれも大ヒット、ファンによって「尾道三部作」と名付けられた。
アイドル映画、文学作品、大人向けのファンタジー、重厚な人間ドラマ…と、多彩なジャンルの作品をコンスタントに発表し続け、2010年代に入っても創作のペースは落ちなかった。映画だけでなくAKB48のミュージックビデオの演出など、活躍の場も広かった。
しかし、2016年に肺ガンが見つかり余命3か月の宣告を受け、抗がん剤治療を受けながら『花筐/HANAGATAMI』を撮影して完成させた。抗がん剤のおかげで病状が回復、2018年に久しぶりに尾道を舞台に製作した映画が『海辺の映画館―キネマの玉手箱』だった。

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上妻 祥浩

熊本県出身・在住。地元の新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等で新作映画の解説の仕事を行な...

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