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「映画芸術」を感じる2作品。被写体の動きが与える映画の感動とは

■どこまでもさりげない巨匠オリヴェイラ

映画は、イヨネスコの「瀕死の王」の上演とともに幕をあける。舞台上での様子は、フル・ ショットとバスト・ショットの的確なつなぎで紡がれてゆく。上演後、カメラは舞台袖の暗がりに据えられ、観客の拍手に応じる役者達が何度も舞台上へ出て行く姿をフル・ショットで捉える。だが、なぜだかその画面には不吉さとも言うべきものが漂っているのだ。画面奥にいる明らかに役者ではない3人組の男達が異質さを醸し出しているからであり、この公演で主役の王を演じた演劇人として名高い老優は妻と娘夫婦に不運な事故があった事を告げられる。

舞台俳優達のカーテンコールを捉えたシーンはたったの3ショットからなっているにも関わらず、そのショットの連なりはたかだか3ショットであるが故に深い意味を持ってくる。わずかなショット数で説明の過不足なく物語を展開し、さらにそこに上質なサスペンスをも醸成してしまうオリヴェイラの演出のさりげなさには驚嘆せざるを得ない。だが、オリヴェイラは不幸に見舞われた一人の老優の物語を深刻に描こうとはしない。パリの街を散策する老優がふと1枚の美しい絵に目を留めれば、ショパンの「別れのワルツ」をさりげなく流してしまうし、日課として訪れるカフェでは何とも軽妙な席の争奪戦が演じられもする。紙袋と大きな包みを抱えた老優と両親を失った孫息子とが木漏れ日のさす中、家の中へと入ってゆく姿を捉えたロング・ショットの美しさなど思わず息を呑んでしまうほどである。では、何事もなかったかのように日々を過ごす老優と孫息子との関係は最終的にどのような結末を迎えるのか。

何とも胡散臭い感じのジョン・マルコヴィッチが監督を演じるジョイス原作の「ユリシーズ」 の映画撮影の途中、台詞につまった老優はおもむろに立ち上がり、「私は家に帰る」と息絶え絶えにそのまま現場を出て行ってしまう。台詞をぶつぶつと呟きながら街中を闊歩し、「家路」 についた老優。家の庭では孫が勢いよく自転車をこいでいる。老優は廃人の如く家の中へ入り階段を上っていくばかりで、駆け寄る少年の方へ振り返ろうとはしない。少年は、その姿をじっと見つめながらも、ふと視線を落とす。この切り返しで1人の老人と少年とが視線を交わし合うという事はとうとうないのだが、どこかへと視線をやる少年の姿は生と死を超越した永遠性として観る者の心を震わせる。映画のラストに切り返しを使ってみせたオリヴェイラの さりげなさの勝利といったところだろうか。

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バンビーノ

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