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月9好きな人がいること 〜山﨑賢人の超-身体!〜

近頃の「月9」はその「低視聴率」が示している通り、制作サイドの思惑とは裏腹に失策を重ね続けているように見える。映画界が空前の「マンガ実写化」ブームを迎えている中で、その恩恵に与ろうとして援用される「ラブコメ」的要素(「胸キュン・アクション」)も毎週続いてしまっては視聴者をシラケさせてしまうよう。映画が完全に「虚構」の産物であるとすれば、より「身近」にあるテレビドラマに人々が求めるものが日常の延長上としての「現実味」であることは当たり前のことなのかもしれない。事実、恋愛ものよりもオフィスで働くサラリーマンやOLの様子を描いたドラマ作品の方が視聴率を伸ばしていることが何よりの証左である。
 とは言え、この度の『好きな人がいること』の道具立ての数々はやはり魅力的と言う他はないだろう。「真夏の海」(しかも湘南!)とそこで「共同生活する男女」という設定はまさに月9の「王道」を行くものではないだうか。冒頭部分からすでに特筆すべきシーンがある。それはパティシエとして住み込みのアルバイトをするために湘南にやってきた桐谷美鈴が浜辺をプラプラしていると、奥の方からいかにもサーファーといった感じの山﨑賢人が歩いてくるという、「出逢い」の瞬間である。互いの歩調を合わせあうかのような運命的な二人に燦々と降り注ぐ陽光の美しさ、これこそが何か映像を見る(感じる)ということの醍醐味のような気がしてくる。さらに驚くべきは、その太陽光を直に浴びた山﨑賢人の身体に思わぬ化学変化が起こっていることである。
 イタリア映画界を代表する映画監督であるマルコ・ベロッキオがレモン・ラディゲの原作小説の舞台をフランスからイタリアに置き換えて撮った『肉体の悪魔』(1986)で、主人公のマルーシュカ・デートメルスが「イタリアの陽光」に身を晒すことによってこそ体現できたあの恐ろしいまでの美貌の時と同じ様なことが山﨑賢人にも起きているように思われる。日本的でありながら日本的でないとも言える湘南の真夏の陽光に晒された彼の身体は一皮むけたというのか、とにかくとてつもない「熱量」をもったということが言える。この「熱量」が意味するところ、それこそが山﨑賢人がこれまで演じてきた役に共通する「過去に何かを背負った男」というキャラ設定をも引き込みながら、起爆剤としての機能を十二分に発揮し、ドラマに新たな展開を迎えさせることになるのだ。
 『好きな人がいること』の第6話の終局で実は三兄弟のうちで山﨑賢人演じる次男夏向だけがほんとうの兄弟ではなかったという事実が明らかとなり、エンディング映像からも山﨑の姿が消えてしまったりと、ドラマが不意に「シリアスな雰囲気」を帯びはじめたことは言うまでもない。が、それはある意味当然のことと言える。そもそも「過去に何かを背負った男」という設定はキャラクターの特性として付与されたというよりも、もともとそれを持たざるを得ない山﨑賢人自身の「身体性」に起因しているのだ。黒み勝ちでほとんど白みを包み隠している瞳は、絶えず何か秘密を孕み持ち、それをひた隠しに秘め続けているかのような「漆黒」を湛えており、その澄み切った奥の方から対象へと注がれる視線が、見ている側におぼろげな寄る辺ない感興を催させる。だから彼のほとんど無意識的と言ってよいオートマティックな視線移動の瞬間を少しでもみてしまったのなら、そこに「過去」そのものを純粋に見て取るより他ないのである。
 思えば『ヒロイン失格』(2015)ですでに桐谷美鈴と共演を果たしていた山﨑賢人がその時演じていた「寺坂利太」というキャラクターも当然のことながら「過去に何かを背負った男」であった。あの時も山﨑賢人はその澄んだ視線をあらゆる方向へ彷徨させていたが、それを「魔力」と呼んでは少し言い過ぎだろうか。しかしそれぐらい純然たるものを彼が持ち合わせているということは確かであり、事実そのことによってドラマが誰も予期しなかった方向に展開していったはずである。最終回を前にしてその「魔力」をいかにして発揮するのか。山﨑賢人の「超-身体」に注目が集まるところだろう。

とは言え、普段の山﨑の演技をみると確かに迷いが多いようにも見受けられる。それが時にがむしゃらな印象を与えるこもある。しかしそうした逡巡の中でもがくことで彼は必ず自分なりの発見をする。これは俳優にとっては最も重要な「対話力」だ。こうした迷走と対話の錬磨はある時、キャラクターと俳優自身とが渾然一体となって、ひとつの理想型とも言えるカタチある演技を表出できることがある。

キャラクターよりも、俳優のその身体自体が生々しく浮上する。こういう瞬間を垣間見せる山﨑の演技には緊張感があり、みていて面白い。

どんな逆境にあっても決して挫けない精神力を持つ信というキャラクターがはまり役となり、ここぞと言う瞬間に思いもよらぬ馬鹿力を発揮した山﨑賢人という俳優の天賦の才は、真の映画俳優にこそ相応しいものだ。そして、こうした事実を大きな成果としてさらなる跳躍に踏み出そうとする山﨑はこの先もはや向かうところ敵なしだろう。

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バンビーノ

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