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【映画の波打ち際12】映画で考える21世紀

■『これは映画ではない』その21世紀性について

(C)Jafar Panahi and Mojtaba Mirtahmasb

2010年3月1日、アッバス・キアロスタミが脚本を担当した『白い風船』(1995)で監督デビューをはたしたジャファル・パナヒがイラン警察によって逮捕された。各国の映画人のイラン政府に対する抗議により同年5月には釈放されるが、映画製作、国外への出国を禁止される。そんな状況下で「巨匠」から「映画を撮れない監督」となったパナヒが苦肉の策として自宅で撮影し、「作品」として完成させたのが『これは映画ではない』(2011)である。

紙のテープで仕切りをつくったりして豪華な居間の絨毯を舞台に見た立てたパナヒは、「最後の脚本」を読み進めながらそれを実演していく。初めは楽しげに主人公の少女の心情などを説明していたパナヒであったが、突然、読み進めるのをやめ絨毯に座り込む。そして、怒りを露わにしてキッチンの方へ行ってしまう。まるで脚本の中でフレーム・インしたりアウトしたりする少女や青年の動きをなぞるかの様に、自身もフレーム内を移動し姿を消す。脚本の実演は中断され、自身の監督作品の映像を実際に見せながらモニターの前で熱心に説 明をするパナヒ。ここで、モニターが映される。その微妙な寄りへの切り替え。カッティングが施された映像。そこに被せられるパナヒの声。これは、台詞ではないのか。おそらく、よくよく注意して観ていなければわからぬほどのカットの切り替わりだ。監督業を禁止されている被写体の男が「カット」というかけ声をかけているのか。それとも友人らしきカメラマンを担当している男がその役を担っているのか。観ているこちら側も、これは「映画なのではないか?」と手探り状態で画面をみてしまう。

(C)Jafar Panahi and Mojtaba Mirtahmasb

家の外からは、たびたび何かが爆発する音が聞こえてくる。撮影場所がイランだけに銃声かとも思うのだが、どうやらその日は「チャハールシャンベ・スーリー」というイラン暦の年末最後の水曜日を祝う祭りらしく、外では花火が打ち上げられ、爆竹が大きな音をたてていたのだ。退屈だからと、携帯電話のカメラで打ち上げられた花火を撮り始めるパナヒ。友人のカメラマンを見送った彼は、玄関先でゴミを回収しているのだという青年に出逢い、映画監督としての咄嗟のひらめきなのか、携帯電話のカメラではなく、撮影用のカメラを片手に、 ゴミ回収の青年に同行する。その青年と演じられるエレベーターでの会話は観ていてとても心地よいのだが、カメラが一旦外に出ると一面は火の海。いくら祭りとはいえ、炎に包まれた外の光景はハリウッド映画のような迫力である。と同時に、カメラを担いでいるパナヒが、 外部世界としてのイランの「地獄絵図」からは遊離した存在であるようにも見えた。

人間を、あくまでも純粋に人間を素材にしたドキュメンタリーと「演じられる」劇映画との間であやうげな均衡をみせる『これは映画ではない』。「映画を撮れない監督」が作り上げたこの作品は、明らかに21世紀的な映像と言えるのではないだろうか。

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