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【ピース又吉原作】夢と現実の狭間で揺れ動く男女の不器用で儚い純愛『劇場』

「いつまでもつだろうか」

「いつまでもつだろうか」。
物語冒頭にはじまり、劇中において幾度となく発せられる永田のモノローグ。時間・金・年齢・気持ち・誰かの援助・今ある日々など、思い浮かべるものは人それぞれに異なるが、その言葉が意味するところに心当たりがある人ならば、本作を観るにあたり、とてつもない心の痛みが伴うことだろう。永田が演劇の道での成功を志すように、芸人であったり、俳優であったり、ミュージシャンであったり、ダンサーであったりetc...、何かしら芸事に携わる道を志す者であれば、叶う保証など何処にもない夢を追う者であれば、叶えるための術を見出せぬまま日々を悶々と生きている者であれば、決して他人事では済ませられない葛藤が、本作には恐ろしい程までに詰まっている。

©2020「劇場」製作委員会

とは言え、誰もが常日頃その言葉に思いを巡らせているわけではない。むしろ、その言葉が絡んでくる思考に至るのは極力避けたいこと。一度その言葉に囚われてしまえば、酷く心が蝕まれ、焦燥感であったり、己の不甲斐なさであったり、恥ずかしくて情けなくて消えてしまいたくなる気持ちに包まれてしまうのだから。永田が抱える葛藤や一挙手一投足に身に覚えがある人であれば、まるで自分を見ているかのような錯覚にだって陥るかもしれない。あてもなく街を彷徨い、何もしていない自分を誤魔化すことに必死。嫌なことからは極力逃げ、向き合わなければならないことは可能な限り先延ばしにし、楽な方に、しんどくない方に、誰にも否定されずに済む状況に甘んじて生きていたい。しかし、そんな日々が永遠に続くわけもなく、時折その事実を突きつけられる時がやってくる。その都度「いつまでもつだろうか」と自問自答を繰り返す。人によってはまだいくらでも猶予はあるのだろうが、やがていつかは終わりがやってくる。逃げられなくなる時がやってくる。そういった問題と対峙していくことになる永田の姿は、きっとあなたの心を締め付ける。

©2020「劇場」製作委員会

安定した職業に就いている人や、高望みすることなく堅実に日々を生きている人、身の丈に合った生き方を選ぶことができている人達の心に、永田のような男の心持ちや生き方がどこまで響くのかは正直分からない。だが、仮に響かずとも、永田と沙希が織り成す男女の恋愛模様に関しては響くものがあると思う。つまりは、誰が観ても本作は楽しめる。多くの人の心に届くだけのものがあるとぼくは思う。

【続きが気になっても安心!】最後まで一気に読める完結漫画おすすめランキングTOP30
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高桑 ムツ子

2020/04/06 11:36

又吉さんの処女作は余り好みでなかったが、本は読んでいませんが映画に興味があります

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ミヤザキタケル

1986年、長野県生まれ。 2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW...

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