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『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』 ~”肉塊”の臭いが時代を巧妙に描き出す、奇怪な殺人鬼映画~

ドイツ史上最低の殺人鬼フリッツ・ホンカとは何者なのか

©2019 bombero international GmbH&Co. KG/Pathé Films S.A.S./Warner Bros.Entertainment GmbH

 フリッツ・ホンカ。実在する殺人鬼の中でも比較的地味な存在だ。その名を耳にしたことがある人は決して多くないであろう。殺害人数が4人と少なく、殺害動機もセックスを拒まれ激高したというシンプルなもの……誤解を恐れず言うと、希代の殺人鬼の多くが、何処かインテリでセクシーな魅力を感じさせるのに対して、彼はなんだか「普通」なのだ。だが実際、彼はその普通さ故に、強烈で醜悪な殺人鬼なのだ。
 フリッツ・ホンカことフリードリヒ・ポール・ホンカは、1935年ドイツのライプツィヒで10人兄弟の3番目の子として誕生した。父親はアルコール依存症で体調を崩し早世。母親は清掃員で家計を立てようとしたが、女手一つで10人の子を育てられる訳もなく、貧困を理由に子供達をネグレクト。フリッツは養護施設に預けられることになる。
 ロクな教育も受けられないまま成人したフリッツは、職を転々としながら結婚と離婚を繰り返すうち、湾岸労働者としてハンブルグに腰を落ち着ける。ところが交通事故に遭ってしまい、後遺症で彼の顔面は崩壊。貧乏、無教養、醜悪面という3重苦を抱えることになる。
 さらに多くのアルコール依存症者の親を持つ子がそうなってしまうように、彼もまたアルコール依存症となる。そして、そのアルコールの問題は、フリッツを血みどろの地獄へと引きずり込む。
 1970年、パブで引っ掛けた美容師兼売春婦、ゲルトルート・ブロイアーを自宅に連れ込み、セックスを拒まれると、泥酔した勢いで絞殺。死体をバラバラに切り刻み、ハンブルグの街中に遺棄。死体は発見されたものの、警察に捜査の手がフリッツに行き着くことはなかった。間を置いて74年、再びパブで知り合った売春婦を立て続けに3名殺害。彼の住む安アパートの屋根裏に放置する。腐りゆく死体の腐臭はアパート全体を多い、住民達は次々と苦情を申し立てるも警察は全て無視。大量の消臭剤で誤魔化していたフリッツだが、アパートの火事を発端に放置していた死体が発見され、彼はようやく逮捕となったのである。
 逮捕が遅れたのは、被害者が孤独な売春婦で、捜索願が出されなかったこともあるが、フリッツに対する周囲の認識が「ただのパッとしない貧乏な醜い男」程度で、だれも気にとめない存在であったからだ。だが、逮捕後の証言から彼は、根っからのド変態であることが判明する。低身長をコンプレックスに、自分より小さな女性しか相手にしなかったこと、口淫好きであったこと、口淫時に歯を立てられることを恐れ、総入れ歯の売春婦を好んでいたこと……。
 フリッツは身も心もとにかく醜悪だったのだ。それ故、彼の所業を映像化した『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』は、“これまでで最も卑劣な連続殺人鬼映画”などという評価を得るに至ったのである。

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氏家 譲寿(ナマニク)

ホラーブログ「ナマニクさんの暇潰し」管理人、ZINE「Filthy」発行人、ライター。映画...

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