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【人の心の光と影】今ある自分を見つめ直すキッカケを与えてくれる『影裏』

生きていく上で避けては通れないこと

生きていく上で避けては通れないことがいくつかある。人それぞれに思い浮かべるものは異なるだろうが、数ある中の一つに「人付き合い」というものがあると思う。その言葉を聞いて胸がチクッとしてしまう人ならば、少なからずマイナスなイメージを抱いてしまう人ならば、かつて苦手意識を持っていたと自覚する人ならば、身に覚えのある葛藤がこの作品には詰まっている。会社の転勤で東京から岩手に移り住んだ今野には、親しい間柄の者が一人もいない。新天地での生活なのだから当たり前と言えば当たり前のことなのだが、元より人と関わることが、他者に歩み寄ることが苦手な人物であることは、見ていれば自ずと分かるはず。彼自身が抱えている事情が要因でもあるのだが、それを差し引いて考えてみても、人付き合いが得意でないのは間違いない。そんな折、強引に距離感を詰めてきたのが日浅であった。今野と同様の飢えや渇きを抱えている者ならば、かつて抱えていた者ならば、その戸惑いと期待が孕んだ心持ちを理解できることだろう。

Ⓒ2020「影裏」製作委員会

そつなく人間関係を築ける者であれば、「歩み寄る」だとか「歩み寄らない」だとかいちいち深く考えて相手と接することもないと思う。他愛もない話をしていく過程で相手の人となりを知り、程良い関係性を構築していくことがニュートラルにできてしまう。だが、他者に歩み寄ることが得意でない者は、そのニュートラルさに欠けており、基本受け身でいがち。相手に受け入れて貰えるか、嫌われてしまわないだろうか、ちゃんと会話できているだろうか、そんな思考に囚われてばかりで、相手の人となりを知る余裕などありやしない。同僚達と付き合いで食事にも行く今野だが、そこで深い関係性が芽生えるはずもなく、自分自身を曝け出すこともできやしない。だからこそ、強引にでも自分を知ろうと歩み寄って来てくれる他者の存在が、救いのようにさえ感じられてしまう。たとえ不安が混じっていようとも、相手の断片しか見えていないとしても、期待の方が勝り、何もかもを都合良く捉えていってしまう。それ故に生じる不和が、誤解が、幻想が、良くも悪くも物語を進めていく。

Ⓒ2020「影裏」製作委員会

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ミヤザキタケル

長野県出身 WOWOWシネピック連載、映画boardにて記事執筆。 映画サイトへの寄稿・ラ...

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