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【ベルリン国際映画祭W受賞】一歩踏み出す勇気を与えてくれる名作誕生『37セカンズ』

分かち合うことで繋がる家族の関係性

母子家庭で、母・恭子と共に2人で暮らすユマ。観る方の年齢や立場にもよると思うのだが、障害を抱える我が子を案じ過保護気味な恭子の心の内に強く共感できる人もいるだろう。独身で子どももいないぼくではその辺りに深く没入するまでには至らなかったが、観ていて思った。ユマは23歳ではあるのだが、恭子と衝突していく中で目にする光景は、まさに反抗期の高校生とその母親。本来それ位の年齢時に通るべきであった衝突を、劇中の親子は互いに大人になってから繰り広げる。言わずもがな、障害が一因ではあるのだが、本質的な原因はもっと他にあったように思う。

(C)37 Seconds filmpartners

タイトルの『37セカンズ』とは、ユマが障害を抱えることになった原因を示している。生まれてくる時に息をしていなかった37秒が原因で、彼女は脳性麻痺になった。それは、ユマを演じる佳山明本人に起きたことでもあるのだが、その話を聞いた時に思った。たった37秒、されど37秒。ぼくらの日常で考えたのならあっという間に過ぎ去っていく時間だが、その僅かな時間が彼女の歩む人生の道筋を大きく決定付けた。どう生きていくかは当事者自身の問題であるが、良くも悪くも制約が設けられてしまったと言ってもいい。それは一体誰のせいか。病院のせい?母親のせい?自分のせい?そう、誰のせいでもないから苦しいのだ。誰かを責めるわけにもいかず、自分を責めたところでどうしようもなく、行き場をなくしたその想いは胸の中に抱え込むしかない。発散する術など存在しない。正解不正解を下せる問題でないことは百も承知だし、ぼくがアレコレ言えた立場ではないのも重々承知なのだが、一つの在るべき形として、その想いを家族全員で分かち合えていたのなら、発散できずとも心の痛みを家族間で分散できていたのなら、もう少し違う結果が、物語序盤で目にする関係性とは異なる親子の在り方が形成されていたのではないだろうか。

(C)37 Seconds filmpartners

どう足掻いたところで、過去は変えられない。一度起きてしまった出来事は、なかったことになどできやしない。肝心なのは、それらを抱えたままどのように生きていくかということ。こうして理屈を並べ立てることは非常に簡単だけど、当事者にとっては一朝一夕でどうにかできる問題じゃないこともぼく達は知っている。それらの問題に苦しみながらも向き合っていくユマと恭子の姿が真摯に描かれるからこそ、良くも悪くも断ち切ることのできない家族の繋がりを、深く結び付いたのなら二度と解けることのない家族の絆を垣間見ることができるだろう。

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ミヤザキタケル

1986年、長野県生まれ。 2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW...

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