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【深読み映画レビュー】 『失くした体』 空想と現実の狭間を描いた摩訶不思議なフレンチ・アニメ

Netflixにて独占配信中

<作品解説>

 いやあ、なんとも不思議な味わいを醸し出す作品。まるで『アダムス・ファミリー』のハンドくんのように、勝手に動き出した手首が自分の体を探し求めてパリを彷徨うシュールなアドベンチャーと、不幸な境遇に置かれた天涯孤独の若者ナウフェルのささやかで淡いラブロマンスが、同時並行で描かれていきます。そこから浮かび上がるのは、自分が本来属すべき場所や世界から無理やり「断絶」させられてしまった者の哀しみ。手首にとってはもともと繋がれていた肉体、ナウフェルにとっては死んだ両親と幸福な少年時代。今の自分は本当の自分じゃない、今の環境は自分がいるべき場所じゃない。そんな疎外感を抱えた彼らが幸せを求め、最終的には魂が解放されるまでを、ノスタルジックかつ抒情性豊かに描いていきます。

 手書きアニメの繊細でオーガニックな感触と、3Dアニメの写実的でリアルな再現力を求めたクラヴァン監督は、フリーの描画ソフト「Blender」を用いて両者を融合させたのだそうです。空想と現実の間に存在する世界、つまり非日常と日常が混ざり合ったシュールな世界を再現するためには、いかにもアニメ的な表現方法ではなく、よりリアルなデザインや動きが相応しいと考えた監督。そのため、キャラクターの動きも実際にその声を担当する俳優に演じさせ、それをロトスコープの技術でアニメ化し、その際に録音したセリフを使用しています。そうして出来上がったのが、どこまでもリアルで現実に近いけれど、しかし本物の現実とは明らかにどこか違う、アニメーションでしか描くことの出来ない独特の映像美なのです。

 また、フランスのインディー・ロック・バンド「The Dø」のメンバーである、ダン・レヴィーが作曲した哀しげで美しいモダンな音楽スコアも魅力的。過去に伊勢谷友介主演のアメリカ映画『パッセンジャー』(’05)などを手掛けたことのあるダンは、必ずしも思い通りに仕事の出来ない映画音楽に辟易し、そのため映画のオファーはずっと断っていたらしいのですが、本作に限ってはクラヴァン監督の世界観に強く惹かれて考えを改めたのだそうです。エンディングで流れるLaura Cahenの「La Complainte du Soleil」という曲も、メランコリックなメロディとギターの音色、そしてジェーン・バーキンを彷彿とさせる歌声がなんとも魅力的で、すっかりハマってしまいました。見終わった後にジワジワと感動が押し寄せてくる作品。地味ながらもおススメです。

Netflixにて独占配信中

失くした体

失くした体

SCORE

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なかざわ ひでゆき

キャリア25年以上の映画&海外ドラマ・ライター。旧ソ連モスクワ育ち。日大芸術学部映...

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