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【レビュー】ドキュメンタリー映画『ドリーミング村上春樹』で“並行世界”を旅しよう

翻訳家の仕事やその姿勢を丁寧に

『ドリーミング村上春樹』は60分ほどの短いドキュメンタリーですが、翻訳家メッテ・ホルムの仕事の様子をとても丁寧に捉えています。
その代表的な例に、作中で幾度となく登場する『風の歌を聴け』に登場する文章
“完璧な文章などというものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね”
の翻訳があります。

メッテ・ホルムはこの文章を翻訳するにあたり、「どんな単語が適切か」「その単語は日本語の語感を意識できているか」など、読者に“ムラカミ・ワールド”を正しく伝えるために何度も何度も、様々な言葉を当てはめます。
一見、読み手なら気にしなさそうなことでも、メッテ・ホルムは日本語の語感を大切にし、可能な限りデンマーク語として読者に届けるために試行錯誤を重ねるのです。

さらに村上春樹の世界を知るために、メッテ・ホルムは日本を訪れます。
「仕事は1人でするのが好き」と語る彼女はマネージャーや付き人をつけるわけでもなく、1人でホテルを取り、タクシーを手配して日本という世界を彷徨います。

日本に住む海外の友人から翻訳についてアドバイスをもらったり、村上作品に登場しそうなお店や場所に訪れたりするなど、言葉だけではなく小説の舞台に訪れてこそ分かる世界観をメッテ・ホルムは感じ取ります。

翻訳だけが作者の世界を伝える方法ではない

https://eiga.k-img.com/images/movie/91265/photo/1209b56608b4f2ce/640.jpg?1567994620

『ドリーミング村上春樹』では、翻訳家であるメッテ・ホルムが翻訳された村上春樹作の表紙について、色々と意見をしているシーンがあります。
出版業界に明るくない筆者からすれば、「翻訳家がここまで表紙に意見できるんだ!」という驚きもありますが、それ以上に彼女は常に「村上氏なら、そのデザインは望まないかも」など、あくまで彼の代弁者である姿勢を崩しません。まさにプロ。

その後、彼女の意見を聞いて表紙は再度デザインされますが、果たしてメッテ・ホルムの望んだデザインとなったのでしょうか・・・?

次のページ : “ハルキスト”のにやにやが止まらない演出も多数 

Commentコメント

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峯丸ともか

2019/11/28 23:01

素敵なレビューを見て映画を見たいと思ったのですが、東京では、もう上映されていないようです。気になっていた映画だったので公開直後に観に行くべきでした。残念(××)。かつて、翻訳家を目指したことがあるのですが、あまりにも難しくて挫折しました。その頃の気持ちを思い出して懐かしくなりました。ありがとうございます。

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ヤマダ マイ

2019/11/29 12:53

コメントありがとうございます!私自身都内に住んでいないので、単館系の作品はどうしてもレビューが遅れてしまうのが、改めて悔やまれます…汗
翻訳家の仕事がなんたるかを、素敵な世界観になぞらえて教えてくるので、きっと映画を見ても当時のことを思い出してもらえると思います。ぜひDVDがでたら見てみてください!

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ヤマダ マイ

派遣社員としてSEOライター(謎)をしつつ、個人で映画ライターをやっています。「映...

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