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岡田将生

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短編映画『Brotherhood』が描く、ジャスミン革命の静かなるエピローグ

はじめに

1956年にフランスから独立した同国(翌年までは王国。現在までは共和国)は、社会主義から自由主義への転換。国民の98%がイスラム教スンナ派が占めるなか、世俗的な社会を目指した背景と同教主義への抑圧。経済の混乱と独裁政権への不満。ジャスミン革命の成功。そしてイスラム原理主義化する若者たち。嵐のような軌跡を辿ってきた。

作品自体からは、登場人物の胸中や社会的背景への説明は僅かに留められているが、上記の目まぐるしいチュニジア情勢がこの映画全体に横たわり、染みつき、包み込んでいる。

目を背けられない内戦の存在と、混沌としたチュニジア史の中で、彼らは静かに心を交そうとしていた。


監督:Meryam Joobeur

Brotherhoood:予告

あらすじ

ジャスミン革命以後、舞台は牧歌的な景色が広がるチュニジアのとある田舎。夫婦と息子二人は羊飼いとして生活している。

同時期のチュニジアでは、若者がシリア内戦への参加を目的として、次から次に国を後にする問題が深刻化していた。

そんなある日、「一年間消息不明だった」とされる長男マレクが、ニカブで身を覆ったシリア人の少女、ニームと共に帰って来た。再会を喜ぶ兄弟、マレクの生存に安堵する母とは対照的に、父モハメドの表情には戸惑いと怒りが滲む。

それからの数日間、シリア内戦に過激派として参加していたマレクと、現地人であったニームに対するモハメドの態度は厳格を極め、遂には「家族」の関係に終止符を打つ行動に出てしまう。直後、ニームが語る真実にハッとするモハメドであったが、時は既に遅かった。

ジャスミン革命の以前と以後

ジャスミン革命とは2010年から2011年までチュニジアで起きていた民主化運動であるが、この革命が勃発に至るまでには様々な原因があった。

先ずは失業率の高さが挙げられる。鉱業と伝統ある農業、両者を加工することで成立する工業が同国経済の中核として存在し、加えて観光業界では約37万人もの雇用を生み出していた。その他、ヒューレット・パッカードを筆頭に多くの国際的な大企業の誘致にも成功していたため、アフリカ有数の経済的勢いを持った国家として世界は位置づけていた。

そのように2000年代の資本主義的な経済の自由化は恩恵も大きかった半面、失業率は全体にして14%。若年層に限れば30%と高い数値を示していた。若者たちの間では、成長する経済の成果が自分達の生活に還元されない現実に対する不満が高まるばかりであった。

もう一つの大きな原因と言えば、ベン・アリー氏による1987年から23年以上に渡って続いてきたヘゲモニー政党制に等しい長期政権への憤りだ。特定ファミリーによる利権の独占。政府によるイスラム主義や社会主義への抑圧・弾圧など、民衆にとっての自由が制限されていることに対しフラストレーションは強大化していた。

イスラム主義に関しては、隣国アルジェリアでイスラム主義組織によるテロが実行されたことから内戦に発展した経緯が背景として色濃い。その内戦とは「暗黒の10年」とも呼ばれ、最大で約15万人が犠牲になったと推測されるアルジェリア内戦のことであり、イスラム主義への弾圧は同内戦の「チュニジア版」を危惧した結果と捉えられる。

社会主義・共産主義に対しては、ベン・アリー氏自体が社会の民主化や国民主権を掲げ、前述の経済政策においても「西側のアプローチ」実践者であったことに起因する。

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Seiya Asano

映画製作チームBand a Nerdとして活動中。 自身最初の長編映画、『雀色の永訣』...

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