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【リアルわにわにパニック】『クロール ―凶暴領域―』とワニ・パニック映画の世界

ハリケーンとワニ軍団のダブル攻撃!逃げ場がない凶暴領域の恐怖!

©2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

巨大なハリケーンが迫るアメリカ・フロリダ州。大学の競泳選手ヘイリー(カヤ・スコデラリオ)は、一人で暮らしている父のデイヴ(バリー・ペッパー)と連絡がつかない、という電話を姉から受ける。両親が離婚したこともあり父と疎遠になっていたヘイリーだが、故郷の町へと車を走らせる。デイヴは、家族との思い出が詰まった、湖畔にあるかつての我が家にいると確信したヘイリー。彼女の予想は的中したが、デイヴは地下室で負傷し気絶していた。洪水に見舞われ浸水している家からデイヴを連れ出そうとするヘイリー。だが、水の中から無数のワニが家に侵入し、二人は身動きがとれなくなってしまう。思うように救助も呼べない状況の中で、父娘は無事に脱出できるのか…?

いわゆる「動物パニック映画」の一種だが、舞台はほとんど一軒家の中だけ、主な登場人物はヘイリーとデイヴの父娘二人だけという、シンプルを通り過ぎたミニマムな設定。アルフレッド・ヒッチコックの名作『鳥』(1963)の後半や、それにインスパイアされたゾンビ映画の先駆け『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)をさらに小規模にした作りと言える。しかも、大スターも出演していないし、エンド・クレジットに出てくる出演者の人数も少ないこと!これは予算をかけてないだろうなあと下世話な邪推をしてしまうが、これが不思議と安っぽさが感じられない作りになっているのだ。
これは恐らく、見せ場を巧みに盛り込んでいる演出の上手さ、そしてハリケーンや洪水の描写をきちんとしているからだろう。
監督のアレクサンドル・アジャは『ヒルズ・ハブ・アイズ』(2006)などサスペンス・ホラーの名手。さらに製作を務めたサム・ライミは、低予算ながらホラー映画の名作となった『死霊のはらわた』(1981)や、トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』シリーズ(2002~7)などさまざまな娯楽映画を手がけた名監督。この二人が組んだのだから、面白くならないわけがない!予算をかけずに面白い映画を撮る術を心得た名手二人のコラボなのだ。
そして、まるで海か川のようになってしまった我が家の中を完璧に再現したスタッフの力量。撮影は予算などの都合からセルビア共和国の首都ベオグラードで行なわれ、家の中のセットに大量の水を流し込んでの過酷な撮影が続いたという。ここがリアルにできていないと、せっかくのスリルとサスペンスも台無しになってしまう。ここに予算などすべてを集中させた戦略は、まさに娯楽映画作りの基本。21世紀になって20年が経とうとしている現在でも、映画作りの基本は変わらないのだ。
登場するワニたちはすべてCGということだが、これも予算や撮影にかかる手間暇を考えたら仕方がないこと。技術は進歩しているので、監督たちが狙う画面作りを少しでも簡単に実践するためにも、CGの方が安くて確実なのだ。

次のページ : アイディアで勝負した娯楽映画の達人と、戦う人魚

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上妻 祥浩

熊本県出身・在住。地元の新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等で新作映画の解説の仕事を行な...

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