映画board

【インドの熾烈な"お受験戦争のリアル"を描く】笑って泣けるコメディムービー★『ヒンディー・ミディアム』

話題のボリウッド映画『ヒンディー・ミディアム』

映画『ヒンディー・ミディアム』公式サイト/2019年9月全国順次ロードショー

イントロダクション

「ヒンディー・ミディアム」とは??

本作のタイトルとなっている「ヒンディー・ミディアム」とは、「ヒンディー語で授業を行う公立校」という意味。これに対して、「英語で授業を行う私立校」のことを「イングリッシュ・ミディアム」と言います。どちらでも必ず英語を学びますが「イングリッシュ・ミディアム」校の方が、ネイティブ並の語学力を身に付けることができます。

http://hindi-medium.jp/wp-content/uploads/2019/08/Irrfan.jpg

キャスト・スタッフ

<キャスト>

イルファーン・カーン

サバー・カマル

ディーパク・ドブリヤル

スワティ・ダース

アムリタ・シン



<スタッフ>

監督:サケート・チョードリー

脚本:ジーナト・ラカーニー
   サケート・チョードリー

ダイアローグ:アミトーシュ・ナーグパール

共同プロデューサー:ディネーシュ・ヴィジャン
          ブーシャン・クマール


あらすじ

主人公・ラージは、インドのデリーで老舗の衣料店を営んでいる。
家族で代々続けていた事業を成功・拡大させ、美しい妻・ミータと愛娘・ピアとともに幸せな暮らしを送っていた。
そんななか、妻のミータが、学齢期を迎えた娘のピアを「イングリッシュ・ミディアム」である、私立の小学校に入学させたいと言い出す。
ミータは「ヒンディー・ミディアム」である、自分たち夫婦の学歴にコンプレックスを抱いており、娘には同じ苦労をしてほしくないと考えていた。
娘の輝かしい将来のために、ラージ一家は壮絶なお受験戦争に乗り出すことになり・・・。

注目ポイントはここ!

http://hindi-medium.jp/wp-content/uploads/2019/08/Saba.jpg

1. そこまでする!?驚きの受験戦争

日本など世界の様々な国にも存在する「受験戦争」。
インドの場合、名門大学で学ぶためには「英語力」が必須です。
そのため幼いうちから語学力をつけようと、初等教育や中等教育の段階で「イングリッシュ・ミディアム」の学校に入学しようと考える家庭が多くあります。
しかも、本作のラージ一家が目指すような、私立のイングリッシュ・ミディアム校では、小学校あるいは幼稚園~中学校までエスカレーター式の場合が多く、そのため場合によっては受験戦争は就学年齢に達していない乳幼児のときから始まっているのです。
我が子を私立の「イングリッシュ・ミディアム校」に入学させるため、幼いころからの塾通いは当たり前。
また、名門校が「学校に近隣に住む」子どもたちを優先的に入学させるなどの理由から、受験のためだけに引越しをするという家庭も珍しくありません。
そして、優先枠に入れなかった一般の受験生徒の親は、徹夜で入学願書の受け取りに並びます。

本作では多少脚色されてはいるものの、こういった驚いてしまうほどの熾烈な受験戦争のリアルが描かれています。

2. 学歴と貧富の結びつき

どうして「受験」がここまで熾烈なものになるのでしょうか。
その理由は、インド社会の「学歴と貧富の結びつき」にあります。

インドに存在する23の公用語のうち、最も広く使われているのが「ヒンディー語」。
ただ、ヒンディー語を理解する人口は現実的には人口の半分ほどと言われています。
一方、もう1つのインドの主要言語として挙がる英語はヒンディー語よりもはるかに理解できる人口は少ないものの、上流階級の間ではメジャーになっています。
英語を話せることは自分の知性を表す手段であると同時に「ヒエラルキー」を示す指標となっており、まさに「インドで英語は住む世界そのもの」。
英語を話せる親のもとに生まれれば、もちろん英語はネイティブ、金銭的にも受験戦争を戦う上で欠かせない塾にも通いやすい環境で育ちます。
また名門校では「家族がその学校の卒業生か」も受験時に重要視されるので、上流階級の子どもたちは名門の「イングリッシュ・ミディアム校」に通うことになり、名門大学へ進学していくという状況になりやすくなります。
その一方で中流階級や下流階級では、そういったスキルやコネ、金銭面といった点において「受験戦争を勝ち抜くための環境」は十分には得られません。
その結果「学歴と貧富の相関」はますます顕著になっていくのです。

3. インドに根付く「抗うことが難しい格差社会」

こうした「学歴と貧富」の相関への打開策として、近年インドでは低所得者層への教育の機会を広げようと、私立校での「低所得者層への留保枠」というものが設けられるようになりました。「留保枠」で入学した生徒たちは、初等教育を無償で受けることができます。
ただ「留保枠」で入学したとしても、学校生活のなかで追って必要となる費用が払えなかったり、上流階級の子どもたちとの間で亀裂が生まれたりと、その学校で学んでいくことが難しくなってしまうケースもあり、制度として完全に機能しているわけではありません。

4. エネルギッシュな音楽とパフォーマンス

社会問題を取り上げている点以外にも欠かせないのが、本作で登場する「パワフルな音楽やパフォーマンス」です。
上記の『Suit Suit』は本作エンディングで使用されている楽曲で、インドの北部の地方の伝統的な音楽をルーツにした"現代版バングラ"と呼ばれるもの。
パワフルな中にもクールな存在感があり、一度聴いたら耳に残る鮮烈な楽曲です。
また、ネタバレになるので詳しい描写は避けますが、本作において子どもたちが様々なパフォーマンスを繰り広げるシーンは、インドの子どもたちの輝かしい才能や子どもの持つ無限の可能性を感じさせてくれる、本作を象徴するシーンの1つと言えます。

レビュー

http://hindi-medium.jp/wp-content/uploads/2019/08/Deepak.jpg

万国共通の「親の愛情」

圧倒的な格差社会や日本よりもはるかに厳しい受験戦争。
そんな日本とは違う部分も多いインドの現状を描いた作品ですが、日本に住むわたしたちでも共感できる部分も多い本作。
その理由として挙げられるのが本作は「子に対する親の愛情」を描いた作品であるということ。
主人公の妻・ミータは、娘を名門校に進学させるために家庭ではヒンディー語を封印したり、夫にも今まで住んでいた下町の空気感を感じさせないようにしようとします。
一見、過剰にも思えますがこの行動は「娘に豊かな人生を歩んでほしい」という思いからくるもの。
ミータは、自分たちがヒンディー・ミディアム校出身であることやそれに付随するような周囲の環境にコンプレックスを抱いており、イングリッシュ・ミディアム校に入ることで娘がそうした環境によって生まれる苦労をせずに済むのではと考えているのです。

本作はそうした様々な"親の愛"が歪んだ方向へ作用していってしまいますが、こういった過剰な「愛情」は決してインドだからというわけではなく日本や他の国でもありうることではないでしょうか。

子どもの本当の幸せとは

「より良い学歴」や「より良い生活」を送るために、受験戦争を勝ち抜こうと奮闘する親たち。
もちろん、普段の生活や勉強において子どもによりよい環境を与えようとするのは当然であり、親のある種の義務とも言えるかもしれません。
ですが本当に考えるべきは、子どもにとっての「本当の幸せ」。
大人になるとどうしてもお金や生活水準などで幸せの価値を測りがちになります。
ですが子どもが求めているのは、仲良しの友達と一緒に過ごせたり、家族が笑って過ごせることといった些細な幸せ。
裕福に生まれても貧しい環境に生まれても、それぞれ夢や希望を持っている子どもたち。
大人のすべきことは「表面的なエゴでその希望や夢、未来を奪わない」ことではないでしょうか。

目で見えないものの価値

本作において全体として伝わってくるのが「目に見えないものの価値」。
名門校への切符欲しさに不正入学を試みようとする親たち。
一方で、ラージ一家が移り住んだ下流階級の地域に住むシャーム一家は、突然やってきたラージたちにとても親切に接します。
自分たちの生活が厳しいにも関わらず、食べ物や水を分けて助けようとしてくれ、ラージの娘・ピアのことも我が子のように可愛がる彼ら。
もちろん、上流階級でもそういった親切をする人もいるでしょうし、下流階級の人が全員親切というわけではないでしょう。
ですが「人としての価値」は、収入や住んでいる土地、話せる言語などではなく、一人一人の本質という目に見えないものにこそ現れる、という本来当たり前であるはずのことを、私たちに改めて認識させてくれます。

総評

「貧困問題」や「格差社会」「教育問題」など現代における重要なテーマを描きつつ、全体を通してコミカルに描いているので重くならず、それでいてメッセージ性がしっかり伝わってくる作品です。
劇中で使われているパワフルな音楽にも注目です。
扱っているのは普遍的なテーマなので観やすく、「ボリウッド」に馴染みがない方も楽しめる作品です。
近年注目を集めている「ボリウッド」映画の今後がさらに楽しみになるような良作です。
少しでも気になった方は、ぜひご覧になってみてください♫

劇場情報 映画『ヒンディー・ミディアム』公式サイト/2019年9月全国順次ロードショー

ヒンディー・ミディアム

2019年9月6日より全国にて公開

2017年/インド/132分

more

Commentコメント

コメントしてポイントGET!

投稿がありません。

この記事の画像  4枚

Writer info

TheRedLipstick

映画好きのWebライター。わかりやすい記事を配信したい! 邦画・洋画問わず観ます♪ ...

more

Recommend関連記事

この記事について報告する

board作品へのコメント

Comment記事へのコメント

Ranking動員数ランキング

2019/9/17 更新

映画動員数ランキングへ

Popular人気記事&コンテンツ

Weekly Vote今週の対決

投票する

Pollアンケート

好きな映画のジャンルは?

好きな映画のジャンルは?
SF
アクション
クライムサスペンス
コメディ
青春
ドキュメンタリー
ヒューマンドラマ
ファンタジー
ホラー
ミステリー
ミュージカル
ラブロマンス
戦争
歴史
アンケートに答える

Official SNS公式SNS

PR Storyいま読みたい記事

Presentプレゼント

ご応募はこちら

Popular Tags人気のタグ

おすすめ映画まとめ 洋画 セクシー マーベル ランキング スパイダーマン:スパイダーバース 戦場のピアニスト 邦画 きれい 最強のふたり

Pick Upピックアップ