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映画『炎628』が表現する「戦争の残酷さ」

『炎628 / Иди и смотри』(1985)

https://www.kino-teatr.ru/movie/posters/big/0/2660.jpg

1985年、エレフ・クリモフ監督によって制作されたソビエト連邦の映画『炎628』。
第二次世界大戦中に、ナチスのアインザッツグルッペンによる残虐な支配が行われていたソ連をソビエト人の少年目線で描いた本作。この映画のシナリオは史実に基づいたものであるため、実際にWW2で起きた事件と照らし合わせながら『炎628』を紹介したい。

ナチスの“移動虐殺部隊”、アインザッツグルッペンとは。

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ナチスの悪行と言えば、アウシュビッツを始めとした絶滅収容所、強制収容所で行われていたホロコーストがまず挙げられる。特定の民族・集団を計画的に迫害し滅ぼすことを目的とする、現実に起きていたジェノサイドの代表例である。

それらに加え、ドイツのポーランド侵攻を皮切りに独波戦や独ソ戦においてナチスの侵略に大きく尽力したのが「移動虐殺部隊」ことアインザッツグルッペンだ。

アインザッツグルッペン(Einsatzgruppen)とは、ゲシュタポや保安警察、親衛隊など、様々な部隊が集合した特殊組織であり、ソ連を筆頭に多くの命を奪ったことで知られ、今日では「移動虐殺部隊」の名で呼ばれることが大多数だ。ドイツにとっての「敵性分子」を抹殺することを目的としているが、その対象はユダヤ人、共産主義者、そしてパルチザンであった。

※パルチザン...この場合は占領軍(ナチス)への抵抗運動/非正規の軍事活動を行った者たちと定義する。主人公の少年は、本作の冒頭でパルチザンへの参加を決意し、母親の阻止を押しのけ村を後にする。 その主人公の動向をナチスに目撃されていたため、少年の故郷である村は襲撃を受ける。

ハティニ虐殺

1943年3月22日、現在はベラルーシのハティニ村で発生した虐殺事件である。同日の朝、パルチザンからの襲撃を受けて指揮官を失ったナチスは、その報復として虐殺へと踏み切るのだが、あまりにも惨い事実が残ることになった。

この襲撃では、村人たちを一軒の納屋に閉じ込め(劇中でも同様に描かれる)ガソリンを撒いた後、火を放ち、逃げ出した村人たちも見逃されることなく銃殺されている。結果として149名が命を落とし、そのうち75名が幼い子供であった。

『炎628』ではこの一連の流れに加担するナチスの兵隊たちは快楽的に、そして無邪気に村人たちを冷酷に虐殺するのだが、人間とはこれほどまで恐ろしい悪魔になれるのかと筆者は痛感した。そして、涙が止まらなかった。なぜ、罪のない子供たちがこの様な目に合わなければならないのか。

「それが戦争だから」などという文言で、当たり前のように片づけられる普遍的な「戦争の側面」なのかもしれないが、本作の中で恐怖に怯え泣き叫び、命を落としていく村人たちを見て、「戦争ってそういうものでしょ」とは到底考えられなかった。
役者が演じているにも関わらず、鉄と血の匂いがこびり付いた史実が『炎628』を圧倒的なドキュメンタリーへと昇華させているのだ。

絶対的な平和は無く(目指すのとは別次元の話)、現代に生きる我々が今後この当事者たちと同じ境遇にならない保証などどこにもないのだ。被害者としても、加害者としても。

前述のとおり、本作におけるナチス兵達は心底楽しそうにジェノサイドの一端を担っているが、実際の彼らはかなりサラリーマン感覚だったそうだ。「上の指示があったからやったまで」と発言した幹部も存在する。

戦争という異常な環境に身を置かれた場合、抵抗できない子供たちを集中的に殺害するなど、極悪非道な行為すらいとも簡単に「手に取ってしまう」のだ。

最後に

さて、最後に映画『炎628』のタイトルに言及したい。「628」とはそのまま六百ニ十八と考えて頂きたいのだが、この数字が一体何を意味するのか。

答えは、当時ナチス・ドイツがハティニ村と同様に、残酷な虐殺を行い焼き払ったベラルーシの村の数である。



本来、戦争に反対する気持ちは「保守」や「リベラル」、「白」か「黒」かなど、イデオロギーや一種の傾向に帰属するものではなく全ての人類が共有しているものだと私は願いたい。第二次世界大戦以降、社会は少しずつ少しずつ戦争の恐ろしさや醜悪さを忘れつつあるのが悲しい現実だ。

私だって言葉ではいくらでも反戦を述べることが出来るが、無論戦争を一切経験していない。この様に『炎628』を紹介しながら戦争の残酷さを語ることすら本来は浅はかな行いなのかもしれない。

しかし、浅薄なアホなりに映画を通じて戦争に対して思考を続けていたいし、この記事を読まれる方々に何かを伝えることに信念を持っていたい。

まずは「知る」ことが何より重要だと考えています。映画と芸術を通して、少しでも作り手の「訴え」を心に感じて頂けたら幸いです。

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wickedness

2019/07/03 13:56

これは必読の記事ですね

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トラヴィス

2019/06/29 13:54

特に中高生、大学生には知られて欲しいですね。

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Seiya Asano

2019/07/01 00:34

コメントありがとうございます。戦争に関わらず、ある種の教科書になりえるような作品を定期的に取り上げていきたいですね。

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Seiya Asano

映画を作る、喋る、書くのが好きです。 自主制作ラジオでも毎週映画について語って...

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