
Happy Birthday!
本日お誕生日アンドリュー・ヘイ
あらすじ
1987年、海辺の田舎町。思春期の少女チャーリー(ヘイリー・スタインフェルド)は、父親を亡くした哀しみから立ち直れずにいた。18歳の誕生日、海沿いの小さな町の廃品置き場で廃車寸前の黄色い車を見つけた彼女は、自宅に乗って帰る。ところがその車が突然、トランスフォームする。驚くチャーリーに対し、逃げ惑う黄色い生命体。お互いに危害を加えないことを理解すると、似た者同士のふたりは急速に距離を縮める。記憶と声を失い“何か”に怯える黄色い生命体に“バンブルビー(黄色い蜂)”と名付けたチャーリーは、バンブルビーを匿うことにする。ボロボロに傷ついたバンブルビーと心に傷を抱えたチャーリーの間に思いがけない友情が芽生えるが、予測不能の事態に巻き込まれていく……。
トランスフォーマーは80年代に日本のタカラトミーが米企業ハスブロと提携して作ったロボット玩具だ。
乗り物がガチャガチャ変形してそのまま巨大ロボットになるという男の子の夢が詰まったトランスフォーマーはたちまち大人気になり、TVアニメにもなって子供に夢を提供し続けてきた。
筆者の世代だと海外CGアニメシリーズ『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』シリーズ(1998-2000年)に夢中になった人も多いのではないか。
ただの乗り物や動物がロボットに変形する!
というシンプルな喜びを与えてくれるのがトランスフォーマーのいいところなのだが、
2007年から始まって5作作られてきたマイケル・ベイ監督の『トランスフォーマー』シリーズはベイの異常なまでの細かいこだわりや過剰なサービス精神もあって、映画が毎回2時間半前後の長尺になっていて観るとどっと疲れる。
そして何よりもベイ版のトランスフォーマーの問題点は、「この変形の仕方は子供がおもちゃで真似できないだろ」と思ってしまうくらい肝心な変形描写がガチャガチャ細かすぎて見づらい部分が多いところだ。
もちろん、ベイ的な過剰な描写が好きな人も多いのだが、トランスフォーマーシリーズのファンは複雑な気分になってしまう映画シリーズだったのは間違いない。
シリーズが続くにつれてキャラが増えて要素が増えて行ったのも長尺や見づらさの原因になっていた。
その点今回の『バンブルビー』はシリーズの原点に立ち返って、物語の要素を人気キャラクターのバンブルビーが最初に地球にやってきた時に出会った少女チャーリーとの交流と追っ手との戦いという2点に絞っている。
バンブルビーは悪の集団ディセプティコンとの戦いで母星サイバトロンを追われ地球に飛来、その間の闘いで声も記憶も失ってしまい、チャーリーに拾われる。
バンブルビーを追ってくる敵もいるのだがそれも2体だけなので、話が分かりやすい。
おかげでトランスフォーマーシリーズ最短且つ最近のハリウッド大作としても珍しい114分という尺に収まっているのがまずありがたいところだ。
そして今作の監督はストップモーションアニメ『KUBO 二本の弦の秘密』で高い評価を受けたスタジオライカのトラヴィス・ナイトというのが大きい。
今回のトランスフォーマーたちの動きや変形描写は非常に整理されていて見やすいうえに、スピード感がありながらも「ここがあそこに変形してこうなるのか」という納得度が高い変形の仕方をしてくれるので、よりただの車がロボットになった!という夢に溢れた喜びが満ちている。
これもストップモーションという一コマ一コマを精緻に作っていく作品出身のナイト監督ゆえの資質だろう。
マイケル・ベイ版のバンブルビー
今回のバンブルビー。
このデザインの比較だけみても本作がシンプルに整理されているのがよくわかる。
今回の敵はたった2体。左が女性ディセプティコン戦士のシャッター、右がその部下のドロップキック。
2体とも車だけでなくシャッターは戦闘機、ドロップキックは軍用ヘリに変身でき、自由自在に変形して襲ってくる強敵。
彼らの変形描写もワクワクに満ちており楽しい。
そして今作の肝は孤独な少女チャーリーとサイバトロンを追われ記憶と声を失ったバンブルビーの友情物語だろう。
トランスフォーマーシリーズではあるものの見ていると『E.T.』や『アイアン・ジャイアント』などの往年の地球外生命体やロボットと子供の交流を描いた名作を連想させられる。
少女が「この子は悪くないの!」とロボットを排除しようとする大人たちから守ろうとするというお約束ももちろんあるし、状況を分かっていないバンブルビーが悪気なく家の中を荒らしてしまうのも『E.T.』っぽい。
そして『E.T.』や『アイアン・ジャイアント』との最も重要な共通点はチャーリーが父親を失っているという点だ。
E.T.もアイアンジャイアントもバンブルビーも父のいない子供たちのところに、その代わりの存在のように現れる。
そして子供たちはちゃんとお別れができなかった父の代わりに、しっかりと彼らと別れを告げるのだ。
父や母との別れはそのまま=で子供時代や思春期との別れにつながる。
チャーリーはバンブルビーとの交流と別れを通して、父の死を受け入れ、孤独を自分から解消し、しっかりと大人になっていく。
何回も見たことがあるようなベタな話だが、ベタゆえに実力ある作り手が料理するとこの上なく感動的になるいい見本。
そしてチャーリーを演じたヘイリー・スタインフェルドの高い演技力によってバンブルビーとの友情や別れがより胸に迫ってくる。
バンブルビーの等身大サイズの模型も用意されていたというが、実在しないもの相手にここまで豊かに感情表現できる女優がいたからこそ、バンブルビーの実在感が倍増していたと思う。
ちなみに舞台が1987年なのでザ・スミスやa-ha、オインゴボインゴなどの80'sの名曲がバンバンかかるのも楽しい部分。おまけに声を失ったバンブルビーがカーラジオで音楽やラジオ放送をザッピングして自分の思ったことを喋るシーンもあるので注目だ。
ヘイリー・スタインフェルドの演技だけで胸に迫るものがある。すごい女優だ
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2021/3/1 更新
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