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【残暑のホラー特集1】ジュリア・ロバーツ主演『ジキル&ハイド』で描かれる善と悪を超えた「愛」の物語

■ゴシック小説の世界

(C)1996 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved.

おどろおどろしい雰囲気の古城、土葬された死人たちの魂が彷徨う真夜中の墓地、あるいは夜霧が立ち籠めるロンドンの街など、怪奇的で幻想的な趣味のゴシック世界は、「ホラー」というジャンルの先駆けとなった。欧米では、18世紀後半あたりから、そうした超現実的な小説が流行する。イギリスで誕生することになったゴシック小説は、首相を父に持つホレス・ウォルポールが1764年に執筆した『オトラントの城』を先駆として、その後19世紀初頭にかけて多くのゴシック小説が執筆された。

ゴシック小説は、その時代を映し出す「鏡」として機能している。科学万能主義の時代に、人間の合理性への警鐘を込めたメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』(1818)や繁栄を極めた大英帝国が各国列強の帝国主義政策による勢力拡大や第二次産業革命で「世界の工場」の地位から転落したことで翳りを見せ始めたヴィクトリア朝時代の世紀末に書かれたアイルランド人作家ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』(1897)などが代表的な作品として世界文学にその名が刻まれている。

他列強国からの侵略の恐怖や移民流入により生じる社会問題が内外からの侵略の恐怖として社会不安を醸成する。東欧の地トランシルヴァニア(ルーマニア)からやって来たドラキュラ伯爵は、まさに「外部からの侵入者」であり、当時のイギリス社会が抱える漠然とした不安を反映したキャラクターとして造形されている。ゴシック世界には、その時代ごとに当時の社会状況に対する作者の批評意識がある。ロバート・ルイス・スティーヴンソンによる『ジキル博士とハイド氏』(1885)もまたそうした時代の不安を反映するかたちで執筆され、時代の不安に引裂かれた解離性同一性障害(多重人格障害)の主人公が時代の産物として生み出されたのだ。

【ページをめくる手が止まらない】おすすめ小説30選(2021年版)
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加賀谷健

プロデュース業、時々映画ライター。BANGER!!!、リアルサウンド映画部、FILMAGA、他メ...

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