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春琴抄(1976)

あらすじ

明治のはじめの大阪道修町。軒をならべてにぎわう薬種問屋。その中の一軒、鵙屋の次女お琴は、九つの春に病がもとで失明して以来、一心に琴の修業を続けている。丁稚の佐助はそんなお琴の身のまわりの世話を、一人でまかされていた。お琴の教えるままに佐助は三味線のけいこをするようになった。そんなある日、突然激しい地震が鵙屋をおそった。必死にお琴を救った佐助と、お琴の間には、...

明治のはじめの大阪道修町。軒をならべてにぎわう薬種問屋。その中の一軒、鵙屋の次女お琴は、九つの春に病がもとで失明して以来、一心に琴の修業を続けている。丁稚の佐助はそんなお琴の身のまわりの世話を、一人でまかされていた。お琴の教えるままに佐助は三味線のけいこをするようになった。そんなある日、突然激しい地震が鵙屋をおそった。必死にお琴を救った佐助と、お琴の間には、愛が芽ばえ、はたの者のはかり知ることのできない、不思議な生活が生まれた。やがて一つの奇妙な事件が持ち上がった。お琴が子を宿したのだ。激しくつめよる主人に佐助は、かたくなに答える。「わて、何も知りまへん」。お琴もまた、血相を変えて母にくってかかった。「佐助は奉公人でっせ、わての弟子でっせ」。結局、この子は父親の知れぬまま、さる人にもらわれていった。そうこうするうちにお琴の身に、あいついで大きな不幸がおとずれた。父・安左衛門が死に、その死に誘われたように、師匠・春松検校もまた他界していったのだ。お琴は、師匠に生前から許されていた春琴の名をかかげ、佐助ともども新居に移った。そんな時、お琴をめあてに、美濃屋利太郎が、かよってくるようになった。利太郎はお琴にむりやり、自分の別荘で琴の独演会を開くことを承知させ、当日、別室でいきなりお琴を抱きすくめるのであった。騒ぎを聞きつけて佐助がかけつけた時、利太郎は眉間から血を流してぶざまに倒れていた。ある夜、お琴の身に思いがけない惨事があった。逆うらみをした利太郎がさしむけた賊によって、お琴は顔に熱湯をあびせられたのだ。佐肋が飛び起きた時にはすでにおそかった。お琴はうつぶせで苦悶しながらも、絶叫する。「見たらあかん、わての顔みたらあかん!」。月日が流れ、明日は包帯がとれるという日に、お琴は佐助に涙ながらにうったえた。「お前だけには、この顔を見せとうない」。意を決した佐助は部屋にいき、針を持って、鏡の前で、左、右と激痛にたえながらおのれの両目を突きさすのであった。気配を感じたお琴が佐助の所にきた。「佐助、どないしたんや」「わて、針で目を突きました!」。絶句するお琴。佐助は、自分の目を自らつぶし、お琴と同じ世界に入り、佐助の心にしみついたその美しい姿をだいじにするのだった。そして涙にぬれたほほをよせて、二人はかたく抱きあった。

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